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不同意性交罪
少し前に任命拒否の問題で話題となった日本学術会議が、現行の刑法について問題点を指摘し、国際的な人権基準を反映した法改正を求める提言をまとめたと報じられました。
今後、法務省の検討会で、個別の規定について具体的な議論が始まるとのこと。
報道によれば、提言は、現行法の強制性交等罪で要件となっている「暴行又は脅迫」をなくし、同意のない性交等であれば処罰するという内容を含むとのことです。
この議論は、強制性交等事件をめぐって数々の無罪判決が言い渡されてきたこと、国際社会と比較しても、日本の性犯罪規定が諸外国から取り残され、被害者に厳しく加害者に寛大な規定となっていると評価されていることから生まれたものだと思います。
では、現行法で要件となっている暴行又は脅迫という要件をなくし、同意のない性交等であれば処罰すると規定すれば、これにより、「被害者に厳しく加害者に寛大」と評価されてきた現状を変えることができるのか、というと、そうはいかないのではないかと思います。
なぜなら、仮に暴行又は脅迫という要件がなくなっても、被害者供述の信用性評価方法、被疑者、被告人の故意認定方法によっては、結局、無罪判決が言い渡される事態は変わらないと思うからです。
強制性交等事件で被害者供述の信用性が焦点になることがありますが、その評価はなかなか難しいものがあります。
事案の性質上、現場が密室で、目撃者などもいないことが多いです。
被疑者と被害者の関係性、犯行があったとされる当時の状況に関する被疑者、被害者の供述内容、犯行があったとされる時点以後の被疑者と被害者との間で交わされたやりとり、被害者の言動(周囲への相談状況、被害申告状況等)等を丁寧に調べていくことになります。
そして、被疑者、被害者の供述が食い違った場合は、ほかの証拠との整合状況を調べたり、相互に取り調べたりしてその信用性を評価していきます。
もちろん、本当に被害を受けたかたが、この捜査過程で二次被害を受けることのないように捜査する必要があります。
そのようなことを考えると、強制性交等事件をめぐっては、法改正にとどまらない検討すべき課題があるように思います。
被害者側の代理人弁護士としてサポートさせて頂くにあたっては、その供述の信用性評価が不当にゆがめられることがないように、丁寧にお話を伺い、事情聴取にあたってのアドバイスをさせて頂いたり、捜査機関に必要な情報を届けたりします。
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