<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら
ひき逃げは重い犯罪
人気若手俳優のかたが車を運転していたところ、バイクと衝突する事故を起こしたのに、そのまま現場から走り去ってしまったと報じられています。
「ひき逃げ」という言葉がよく使われますが、法律に「ひき逃げを禁止します」という条文があるわけではありません。
道路交通法には、交通事故があったときは、交通事故にかかる車両の運転者等は直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならないという規定があります。
これに違反する行為が救護義務違反で、いわゆるひき逃げです。
被害者の傷害結果が運転者の運転に起因している場合に救護義務違反に及んだというときは、その法定刑は、10年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。
そして、事故を起こした人には、救護義務違反だけでなく、不注意で事故を起こして被害者にけがを負わせた点につき、過失運転致死傷罪という犯罪も成立し、その法定刑が7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金となります。
この2つの犯罪を犯したとして起訴された場合、懲役刑が選択されれば、その量刑は、重い方の刑の長期に2分の1を加えたものが長期となるので、10年と7年を比較し、重い方である10年にその2分の1である5を加えた15年が刑の長期となります。
つまり、1月以上15年以下の懲役という幅の中で刑が言い渡されることになるのです。
もちろん、法律上、救護義務違反について罰金刑となる可能性はあります。
被疑者の前科の有無、被害者のかたのけがの程度、処分前に示談が成立するかどうか、事故の態様などによって判断はわかれるところであるとは思います。
でも、救護義務違反は非常に重い犯罪で、厳しく非難されるところです。
たとえ被害者との間に示談が成立したとしても、被害者のけがの程度が非常に重く、被疑者の過失や立ち去りの態様に関する悪質性の評価によっては公判請求される可能性も十分あり得るところだと思います。
なぜ救護義務違反がそれほどまでに重い犯罪であるのかというと、救護義務違反は、けがを負った被害者の生命、身体をさらなる危険にさらす行為といえるからです。
すぐに車を停めて救急車を呼んでいれば助かる命があったかもしれない、けがの重症化を防げたかもしれない。
交通事故は、過失の程度はいろいろありますが、不注意による過失犯です。
でも、救護義務違反は、事故を起こして人にけがをさせたのにその場を立ち去るという故意犯です。
強い非難に値します。
報道された事件については、事故を起こした俳優の男性が釈放され、今後在宅捜査になります。
被害者のかたのけがも重いと報じられ、その状況も踏まえて処分が決せられるであろうこと、被害者のけがの状態が少し落ち着いた段階で被害者立ち会いによる実況見分が行われるであろうと考えられることなどからすれば、捜査には時間がかかるといえそうです。
今後の捜査に注目していきます。
初回相談60分無料※ ※ ご相談の内容によっては、有料となる場合もございます
-
電話でご相談予約
-
メールでご相談予約
平日:10:00~最終受付18:00 /
土日祝:10:00~最終受付17:00