リーガルエッセイ
公開 2020.10.16 更新 2021.08.13

広島県 持続化給付金不正受給の疑いで4人逮捕

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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連日、持続化給付金不正受給に関わったとして詐欺罪で逮捕される報道が相次いでいます。
警察の積極的な摘発傾向が見て取れます。
報道によれば、持続化給付金の不正受給関連での逮捕者は、10月14日時点で全国で30人を超えたということです。
広島県で初の検挙事例だという今回は、不正受給の指南役と見られる男性のみならず、その指南役に「アルバイト」などとして誘われて申請に関わった大学生も逮捕されています。
ある不正受給に関し、指南役と申請名義人となった大学生とが詐欺罪の共犯として逮捕されているはずです。
一方で、ほかの報道を見る限り、指南役に誘われた大学生など自分の名前で申請した立場の人物が、逮捕されずに、在宅のまま取調べを受けているといった事例もあるようです。
在宅のまま取調べを受ける、というのは、つまり、これまでどおりの日常生活を送りつつ、警察から「取調べをしたいから、いついつに警察署に来て下さい」という連絡を受けて、警察署に行き、取調べを受けるという状態です。
同じ詐欺罪の被疑者という立場ではあるものの、逮捕されたりされなかったりするケースがあるとしたら、それはなぜでしょうか?

逮捕される場合とは

逮捕されるのは、逮捕の理由と必要性がある場合です。
そして、その判断は、最終的に、裁判官が、逮捕状を出すかどうかというところでなされます(現行犯逮捕などは別です)。
逮捕の理由があるとされるのは、被疑者がある犯罪を犯した可能性が高いといえる事実が認められる場合です。
逮捕の必要性については、法律で、被疑者が逃亡するおそれがなく、かつ、罪証を隠滅するおそれがない等明らかに逮捕の必要がないと認められるときは、逮捕状の請求を却下しなければならないと定められています。
つまり、被疑者が逃亡するおそれがあったり、証拠を隠滅するおそれがあったりする場合に逮捕の必要性があると認められます。
そして、その逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれについては、被疑者の年齢、境遇、犯罪の軽重など個別の事情に照らして判断することとされています。

持続化給付金の不正受給について考えてみます。
逮捕の理由として、ある人が不正受給に関わった可能性が高いといえることは必要です。
この点は、たとえば、本人が認めている、指南役の携帯電話の記録から関与が疑われる、指南役とのお金のやりとりが認められる、税務署に提出された確定申告書と実際の本人の職業に違いがある、などによって判断されるでしょう。
逮捕の必要性については個別事情を見ていくことになります。
まず、指南役の立場にある人は、被害金額も多額にのぼるのが通常で、厳しい処罰が予想されることから、一般的に、それを免れようと共犯者間で口裏合わせをしたり、関係資料を廃棄してしまったり、逃亡を図ったりする可能性が高いと判断される可能性が高いでしょう。
指南役と一言で言っても、それは、単に、その時点で捜査機関に発覚している指南役というにすぎません。
その数名以外に、さらにその上位で指示している黒幕がいるのではないかなどという疑いも持ちつつ捜査されるはずです。
捜査機関は、共犯者間の口裏合わせを防ぎ、犯罪グループの全体像を解明することを目指すはずですから、その意味でも、まだ解明されていない段階で重要な立場にあった疑いのある指南役については逮捕の必要性があると判断されるのが一般的だと思います。

自分から申告すれば逮捕を免れる、という保証などありません。

一方、指南役に誘われ、自分の名前で申請し、給付金の一部を得たという立場の人を逮捕するかどうかについては判断がわかれるかもしれません。
個別の事情によりますし、逮捕状を請求する警察、逮捕状を出す裁判官の判断もそれぞれあるので、一概にはいえません。
でも、一般的に、事前に警察の任意の取調べに応じ、自分の関与を供述していたり、求められる資料を提出したり、捜査に積極的に協力する姿勢が見られたり、家庭や仕事など社会的立場があって、そう簡単に、今いる場所から行方をくらますことがないだろうなと見られたりする場合は、総合判断で、逮捕するまでの必要性はないと判断されることがあります。
そこから考えると、まだ捜査機関に発覚する前に自ら不正受給に関わったことを申告し、真摯に取調べに応じていると評価された場合は、そのかたをめぐる環境(居住関係、家族関係、職業等)も合わせ考えて逮捕せずに捜査を進めるという判断も十分あると思います。
とはいえ、自分から申告すれば逮捕を免れる、という保証などありません。
警察の捜査状況、捜査方針によっては、同じような事情があっても、逮捕される人、されない人とわかれることもあり得ます。
関わってしまったことで捜査対象になってしまうことはやむを得ないとしても、逮捕されるかどうかという点は、日常に及ぼす影響が大きく違います。
万一関わってしまったというかたも、逮捕だけは避けたいと考えるかたもいると思います。
連日の報道を見ていると、警察の捜査は着々と進んでいます。
その状況で、リスクを最大限小さくするために、今、何をすべきか、ご不安があるかたは一度弁護士にご相談ください。

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