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先日、幼い2人の姉妹が、車内で亡くなるといういたましい事件が報じられました。
報道によれば、死因は、熱中症疑いであるとのこと。
現時点の報道からは、まだ、どれほどの時間、この姉妹が車内に閉じ込められていたのかわかりませんが、その間、2人がどれだけ苦しい思いをしたのか、何を思っていたのかと思うとただただ胸が苦しくなります。
そして、この2人の死に関し、母親が保護責任者遺棄致死罪で逮捕されたと報じられました。
報道によれば、この母親が、前夜から子らを車内に残して自分は飲食店を数軒渡り歩いていたのではないかという疑いがあるとのこと。
事実関係は今後の捜査で明らかになっていくと思いますので、この件を離れますが、親が家に子を置いたまま自分は外出してしまい、その間に子が十分な食事を口にすることができず衰弱死してしまうなどという事件を見聞きしたことはありますよね。
そのような事件の多くで、「保護責任者遺棄致死罪」という罪名を聞くことがあると思います。
保護責任者遺棄致死罪というのは、幼児、高齢者のかたなどを保護する責任がある立場の人が、幼児、高齢者のかたなどを放置し、生存するのに必要な保護をしなかった結果として死亡させてしまったというときに成立します。
幼い子を1人家に残したまま、保護者が外出してしまったり、また、保護者が家にいたとしても、幼い子に食事も与えず、身の回りの世話もせずに放置したことで幼い子が亡くなってしまったという報道があると、「これはなぜ殺人罪ではないのか」と思う方もいるのではないでしょうか。
私もそのように思うことがあります。
裁判例を見ると、保護者が子に対し必要な対応をしていなかったために子が亡くなったという事件で、殺人罪とするものもあります。
いったい殺人罪が成立する事件と保護責任者遺棄致死罪が成立する事件とで何が違うのだろうかと思いませんか?
殺人罪と保護責任者遺棄致死罪の区別は
この区別に関し、保護者に殺意があるかどうかが区別の基準だと書かれているコメントを見ることがあります。
でも、過去の裁判例を見てみると、この2つの犯罪を殺意という主観面だけで区別しているということでは説明がつきません。
というのも、過去の裁判例で、殺意を認める余地があったと思われる事件について保護責任者遺棄致死罪の成立を認めているものが多くあるからです。
そうなると、殺人罪か保護責任者遺棄致死罪かの区別は、主観的なものだけでなく、客観面も重要な要素として考慮されているといえます。
その客観面とはどういうものかというと、特定の行為を行うべき義務(作為義務といいます)の存在と、「しなかったこと」が、殺人の実行行為を積極的にした場合に匹敵するくらい悪質だといえることです。
これらの基準、非常にあいまいで、いざ、個別の事件で評価していくとなると、実質的な評価が入るために、判断はわかれそうですよね。
ですので、裁判で検察側と弁護側により、成立する犯罪について、殺人罪なのか保護責任者遺棄致死罪なのか争われることもあるのです。
一般的に、保護責任者遺棄致死罪で逮捕されたにもかかわらず、起訴罪名は殺人罪ということは多くはないと思います。
でも、捜査の結果、判明した事実関係を踏まえ、検察官が、殺人罪で起訴すべきだと判断したら、殺人罪で起訴するということもできないわけではありません(その場合、起訴の段階で、検察官が、裁判官に殺人の事実で起訴後勾留を求めることになります)。
今後の捜査に注目していきます。
幼い2人の姉妹のご冥福を心からお祈り申し上げます。
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