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4年前になりますが、都内のイベント会場で、大学の学生らが出展していた展示物が燃えて当時5歳の男児が亡くなるという大変いたましい事件が起きました。
報道によれば、展示物の内部に置いた白熱灯の熱で、作品内の木くずが発火したことによる火災であったとのこと。
検察は、「10分以内で280度を超える白熱電球を設置すれば、発火して来場者に危険を及ぼすことが予想できたのに投光器を点灯させたまま放置した」ことが重過失致死罪に該当するとして起訴したのに対し、第1回公判期日で、被告人らは、無罪を主張したと報じられました。
被告人らは、投光器を点灯しても、白熱灯の熱で作品内の木くずが発火することなど予想できなかったから無罪だと主張しているとのことです。
「予見可能性」過失が認められるためには
過失が認められるためには、前提として、結果の予見可能性が認められる必要があります。
この点、何をもって予見可能性があったといえるのか、と考えてみるととても難しい問題だと思いませんか?
予見できていたとしたら、違った行動をとっただろうから、それをしなかったということは、やっぱり予見できていなかったのではないか、と思うかたもいるかもしれませんね。
でも、ある人が実際に予見していたかどうかということと、ここでいう予見可能性があったかということは切り分けなければなりません。
ある人が予見していなかったとしても、「この状況に置かれた場合、普通だったら、こうしたらこういう結果が生じることは予見できるでしょう」といえるなら、予見可能性があると認められます。
そうはいっても、この「普通だったら」が難しいですよね。
この「普通だったら」をめぐってしばしば争いになります。
報道された事件についても同様に、予見できるのが普通だと考える検察と、予見することなどできなかったという被告人側とで、今後、この予見可能性があったかという点を焦点に争っていくことになるのです。
まずは、評価の前提となる事実、たとえば、展示物が展示されていた客観的状況(白熱灯と木くずの位置関係等)、使用された白熱灯がどれくらいの時間でどれくらいの温度になるものか、そのことが説明書等の注意書によって明らかになっていたか、被告人らがこれまで同種白熱灯を使用してきた状況、展示にあたり学校側、主催者側からなされていた注意喚起の内容、被告人らの大学における履修内容などを証拠に基づきひとつひとつ丁寧に認定していく必要があるでしょう。
その上で、そのような事実関係を前提にした場合、当時の状況に置かれたら、普通結果予見できたはずでしょう、といえるかどうかを判断していくことになります。
報道によれば、ご遺族は、出展した大学側とイベント主催会社側に対し、損害賠償を求めてすでに民事訴訟を提示されているとのことです。
民事、刑事の各手続きを経て、事実関係、いたましい結果について法的責任の所在が明らかになることと思います。
今後も裁判に注目していきます。
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