リーガルエッセイ
公開 2020.08.07 更新 2021.08.13

夏休み 子どもたちが巻き込まれる危険 – 子供の犯罪被害

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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今年は、多くの小学校、中学校、高校で夏休みが短縮されていると聞きます。
今は、お子さんがその短い夏休みの真っ最中であるご家庭も多いのではないでしょうか?
例年に比べると、外出の機会も減り、自宅で過ごすお子さんも多いかもしれません。
夏休みに子どもたちが巻き込まれる危険、というと、これまでは、外出先での交通事故、水難事故などが真っ先に思い浮かんだかもしれませんが、そもそも外出の機会が減っている今、別の犯罪に巻き込まれる危険にも注意しなければなりません。

自画撮り被害とは?

自画撮り被害という言葉を聞いたことがありますか?
自画撮り被害とは、だまされたり脅されたりして、18歳未満の子どもが、自分の裸などを撮影させられた上、メールなどで送らされる被害のことです。
裸の写真などを送らされてそれで終わる場合ばかりでなく、その画像をネット上で公開されてしまったり、その画像を公開すると脅されて要求がエスカレートしてさらに深刻な被害を受けたりということもあります。
被害に遭うのは中高生が圧倒的に多いものの、小学生の被害もあります。
もともとの知り合いや交際相手に裸の画像を送ってしまう、ということもありますが、最近はSNSで知り合った人から要求されて画像を送る被害があるとのこと。
大人の感覚からすると、まさか子どもが知りもしない人に対して裸の画像を送るわけがないと思いませんか?
でも、SNS上で画像を要求してくる者は、自分の素性を明らかにするわけではありません。
たとえば、中高生相手であれば、こんな男性とお付き合いしたいと思われるような別人の写真やプロフィールを利用して接触し、「付き合っているのだから画像を送ってほしい」と言ってきたり、小学生相手であれば、「裸の写真を送らないと大変なことになるよ。こういうやりとりをしていたことを先生や友達に言っちゃうよ」などと戸惑わせるようなことを言ってきたり、子どもたちの心情や未熟な判断を利用するようなかたちで近づいてくるのです。
昨年には、小学校講師だった男性が、ゲームアプリ上で、小学4年生の女児に対し、自身が小学6年生の女児であると偽って、体の発育について話す中で裸の写真を送るよう求めるなどして逮捕された事例も報じられました。

東京都をはじめとする都道府県で、青少年に自画撮り画像を求めることを禁止する条例の改正が行われ、違反したら罰金が科せられることになっています。
大人が、子どもたちに、「大人が子どもに裸の画像を送らせることは、いけないこととして法令で禁止されているんだよ」と説明しておくと、子どもがいざそのような場面に遭遇したときに少し受け止め方が変わるかもしれません。
そして、なにより、大人は、子どもたちに、SNSのやりとりの相手は、わいせつ行為などの犯罪をたくらんでいる大人である可能性があって、その場合、裸の画像などを送れば、それを公開されたり、それをネタに脅されたりといった被害に苦しむことになるんだよ、ということを説明しておくことが大事ですよね。
実際の被害事例なども東京都のホームページに掲載されているので、そのような事例を子ども自身にも見せるとか、日々報道されるこのような被害のニュースを説明するとかして具体的にどのような手口があるかイメージさせることで、いざ自分が同じ状況に立たされたときに警戒できるアンテナを立てさせることも有効かもしれません。
東京都には、ネットやスマホの悩みの答える「こたエール」という相談窓口があり、電話やメールだけでなく、LINEで相談できるシステムもあるようです。
匿名でも相談できるとのこと。
子どもたちが、親に相談してくれればいいのですが、年齢的にも難しい年齢で、親には恥ずかしくて言えないという場合もあるかもしれません。
そのような思いで悩みをひとりで抱え込み、被害が深刻化することは避けなければなりません。
日頃から、親が子どもたちに、「匿名で利用できる相談窓口があるみたいだから、親に言えないことを気軽に相談してみて」と伝え、いざというときに助けを求める先があることを知らせておくことも大事なことかもしれませんね。

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