勾留阻止と早期示談で不起訴。
ご相談までの経緯・背景
依頼者のA男さんは、ある晩に飲食店で記憶を失うほど酔っ払い、その店の店員さんを投げ飛ばしてしまいます。
店員さんに大きな怪我はなかったのですが、警察に逮捕されてしまいました。
警察署で冷静さを取り戻し、大変なことをしたと後悔しました。
A男さんは人づてに私のもとに依頼をしてきました。
解決までの流れ
警察に逮捕されると、被疑者は警察署内の「留置所」に入れられます。そして、逮捕から48時間以内に、検察官の元に送られます。
送検後は24時間以内に「勾留」されることになるわけですが、A男さんは「なんとか勾留は避けてほしい」と訴えました。
勾留を避けるには、とにかくすべてが時間との戦いになります。逮捕から勾留まで2~3日しかありませんので、そのすべてをこの期間内に終わらせる必要がありました。
まず最初に行ったのが、A男さんの身元証明でした。
事件当日、A男さんは身分を証明するものを持っていませんでした。
警察で「自分はA男だ」と主張しても、それを証明するものがありませんので、警察としてもその言葉をそのまま鵜呑みにすることができません。
そこで、依頼者の自宅の鍵を引き取って、身分を証明するものを探しに行きました。
身分証明書を見つけたら、次に依頼者の身元引受人の手配を行いました。
このようなケースの場合、通常であればご家族が身元引受人になるのですが、A男さんの場合、ご家族にお願いできなかったため、勤務先の社長方に身元引受人をお願いしました。
書類や引受人の手配が整っても、勾留を避けられるわけではありません。このような緊急時には、打てる手はすべて打っておく必要があります。
次に担当の検察官のもとに出向き、彼を勾留するべきではないと直接説明しました。
勾留は、検察が裁判所に請求し、裁判所が認めた場合に行われます。その請求を阻止しようと考えたためです。
検察に説明はしましたが、説明を聞き入れてはもらえませんでした。
そこで、身分証明書や会社の登記簿など必要な書類を急ぎ揃えて裁判所に提出し、担当の裁判官と面談しました。
事件当日、A男さんは記憶を失うほど酔っ払ってしまっていたために、投げ飛ばした瞬間のことをはっきりとは覚えていない状況でした。
そのため、警察での取り調べにおいて、「やったとは思うけれども、その場面は覚えていない」という、認めるとも認めないともつかない証言をする他ない状況でした。
そこで、裁判官には「身分も家族関係もはっきりしており、逃亡の恐れはない」「決して否認しているわけではない」と主張し、勾留が不要であることを説明しました。
結果・解決ポイント
結果、A男さんは勾留されることなく釈放されました。
後に聞かされたのですが、裁判官はA男さんに「弁護士さんに感謝しないとね」と言っていたそうです。
勾留を阻止できたポイントは、短い時間の中で、揃えられるものはすべて用意できたからだと思います。
そのためには、刑事弁護の流れや段取り、なにが必要なのかを瞬時に適切に判断することが求められます。
また、手分けして活動できたことも大きなポイントでした。
A男さんのケースの場合、同僚弁護士と手分けして進めました。
とにかく時間がありませんので、ここからここまでは私、ここから先は中村弁護士と手分けすることで、ひとりではとても手が回らない部分にまで配慮することができました。
釈放後、依頼者とも抱き合って喜び合いました。
依頼者の笑顔と、依頼者経由で聞いた裁判官の言葉は、今でも印象深く覚えています。
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