ハラスメントに対する意識は高まりつつあるとはいえ、今も職場でパワハラの被害に遭ってしまう可能性は低くありません。
もしパワハラの被害に遭ったら、どこに相談すればよいのでしょうか?
また、パワハラについて弁護士に相談することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
今回は、パワハラの被害に遭った場合の相談先などについて、ケースごとに解説します。
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【ケース別】パワハラ被害に遭った場合の相談先一覧
はじめに、パワハラの被害に遭った場合の相談先を、ケースごとにまとめて解説します。
会社に異動などの対応を求めたい場合:会社の対応窓口
会社に対して、パワハラ加害者への指導や人事異動などの対応を求めたい場合の相談先は、社内の対応窓口です。
「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(通称「パワハラ防止法」)」では、会社に対して、パワハラの相談に応じるための体制構築などを義務付けています(パワハラ防止法30条の2 1項)。
人事部などが相談窓口を兼ねていることもあるため、まずは職場における相談窓口を確認したうえで相談しましょう。
なお、パワハラついて相談したことなどを理由に相談者に対して不利益な取り扱いをすることは禁じられています(同2項)。
会社が対応してくれず対応を求めたい場合:労働局
パワハラについて会社に相談をしたにもかかわらず会社が何ら対応してくれない場合や、相談者が閑職に異動させられるなど不利益な取り扱いを受けた場合は、都道府県労働局(総合労働相談コーナー)が相談先となります。
労働局に相談することで、必要に応じて会社に対する助言や指導などを行ってもらうことができます。
犯罪行為にあたるパワハラ被害を受けている場合:警察署
パワハラは、その態様によっては犯罪行為にあたる可能性があります。
該当し得る犯罪は、殴る蹴るなどの暴力を伴うものであれば「暴行罪(刑法208条)」や「傷害罪(同204条)」、職場で悪口を言いふらされた場合は「名誉毀損罪(同230条)」や「侮辱罪(同231条)」などです。
このような場合は、警察に相談をして告訴することが、選択肢の一つとなります。
告訴とは、犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示です。
告訴が受理されると、警察や検察が事件の捜査を行い、最終的に相手が起訴されると相手の有罪・無罪や具体的な量刑が決まります。
ただし、告訴が受理されなかったり、不起訴となったりする可能性もあるため、刑事告訴をご検討の際は、あらかじめ弁護士へご相談いただくことをおすすめします。
人権を侵害されている場合:「みんなの人権110番」
人権を侵害されていると感じる場合は、「みんなの人権110番」が相談先の候補となります。
「みんなの人権110番」とは法務省が管轄する人権問題に関する相談窓口であり、人権問題との側面からパワハラ相談に乗ってもらうことが可能です。
電話のほか、メールで相談することもできます。※1
法的措置を検討している場合:弁護士
パワハラの内容などによっては、相手や勤務先の会社に対して法的措置がとれる可能性があります。
たとえば、相手や勤務先に対して損害賠償請求をしたり、相手を刑事告訴したりすることが挙げられます。
これらの法的措置を自身で行うことは、容易ではありません。
法的措置をご検討の際は、まずはハラスメント問題に強い弁護士へご相談ください。
精神的な辛さを感じている場合:「こころの耳」
パワハラ被害に遭ったことで精神的な辛さを感じており、まずは話を聞いてほしい場合は、「こころの耳」に相談してみるという選択肢があります。
「こころの耳」とは、働く人のメンタルヘルスをサポートするポータルサイトであり、厚生労働省が運営しています。
「こころの耳」では、匿名で職場の悩みを電話やLINE、メールなどで相談できます。
22時まで相談対応を受け付けている曜日もあるため、帰宅が遅い場合であっても相談することが可能です。※2
心身に不調が生じている場合:病院
パワハラによって心身の状態に不調が生じている場合は、病院を受診しましょう。
この場合は、症状を改善することが先決です。
なお、パワハラによって心身に不調が生じた場合には、労災補償の対象となる可能性があります。
そもそも「パワハラ」とは
パワハラ防止法により、パワハラは次のように定義されています。
- 「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害される」もの
ここでは、厚生労働省が運営する「あかるい職場応援団」のホームページを参考に、それぞれの要素について解説します。※3
「職場」とは
「職場」とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所です。
一般的なイメージの「職場」である就業場所(オフィスや店舗など)はもちろん、次の場所も「職場」に含まれると考えられます。
- 労働者が業務を遂行する場所(出張先、業務で使用する車中、取引先との打ち合わせ場所、接待の席など)
- 実質上職務の延長と考えられる、勤務時間外の懇親の場や社員寮、通勤中など
つまり、接待の場や取引先への移動中の車内などで起きた事案であるからといって、パワハラから除外されるわけではないということです。
「労働者」とは
「労働者」には正社員のみならず、パートタイム労働者や契約社員など、事業主が雇用するすべての労働者を含みます。
アルバイトやパート従業員に対する言動であるからといって、パワハラに該当しないわけではありません。
また、派遣労働者の雇用主は派遣元であるものの、派遣元事業主だけではなく、派遣先事業主もパワハラ防止などの措置を講ずる必要があるとされています。
「優越的な関係を背景とした言動」とは
「優越的な関係を背景とした言動」の典型例は、上司から部下に対する言動です。
ただし、次の場合であっても、これに該当し得ると考えられています。
- 同僚または部下による言動で、その言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、その者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
- 同僚または部下からの集団による行為で、これに抵抗または拒絶することが困難であるもの
このように、職制が上の者から下の者に対する言動だけが、パワハラとなるわけではありません。
「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは
たとえ受け手が不快に感じる言動であっても、業務上必要かつ相当な言動の場合、パワハラにはあたりません。
一方で、次のような言動はパワハラにあたる可能性があります。
- 業務上明らかに必要性のない言動
- 業務の目的を大きく逸脱した言動
- 業務を遂行するための手段として不適当な言動
- その行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動
これに該当するかどうかは、次の要素などを総合的に考慮して判断します。
- その言動の目的
- その言動が行われた経緯や状況(その言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容、程度など)
- 業種、業態
- 業務の内容、性質
- その言動の態様、頻度、継続性
- 労働者の属性(経験年数や年齢、障害がある、外国人であるなど)
- 労働者の心身の状況(精神的または身体的な状況や疾患の有無)
- 行為者との関係性
「就業環境が害される」とは
パワハラに該当するか否かの判断では、その言動により職場環境が害されたかどうかも一つの要素となります。
「職場環境が害される」とは、その言動によって労働者が身体的または精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったために能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。
この判断にあたっては、受け手である労働者の主観ではなく「平均的な労働者の感じ方」が基準とされます。
パワハラについて弁護士へ相談するメリット
パワハラの相談先候補の一つとして、弁護士が挙げられます。
では、パワハラの被害に遭った際、弁護士に相談することにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
ここでは、主なメリットを解説します。
対応の方向性を決めやすくなる
1つ目は、具体的な対応の方向性を決めやすくなることです。
一口に「パワハラ」といっても、その内容や態様、程度などはさまざまです。
また、適切な対処方法は、被害者の希望(その職場で勤務を続けたいか、退職したいかなど)によっても異なります。
そのため、具体的な状況に応じた適切な対処方法を自分で判断することは容易ではないでしょう。
弁護士へ相談することで法的措置の可否などの見通しが立てやすくなり、被害者の希望や状況に応じた適切な対処方法を定めやすくなります。
会社や相手方との交渉を代理してもらえる
2つ目は、会社や相手方との交渉を代理してもらえることです。
弁護士へ依頼する場合、弁護士が窓口となって会社や相手方との交渉を行います。
そのため、自分で直接交渉をするストレスや不安などから解放されます。
また、不用意な言動の言質をとられ、不利となる事態を避けることも可能となります。
損害賠償請求や刑事告訴を代理してもらえる
3つ目は、損害賠償請求や刑事告訴を代理してもらえることです。
損害賠償請求や刑事告訴には、専門的な知識や経験が必要です。
特に損害賠償請求では、適切な損害賠償請求額の設定や相手方との示談、示談が成立した場合の示談書の作成、相手が支払いに応じない際の訴訟の提起などが必要となり、自身で行うことは容易ではありません。
弁護士へ依頼する場合は、これらの手続きを任せることができるため安心です。
また、請求に応じなければ訴訟に移行する可能性が高いと相手方が考えることなどで、請求を有利に進めやすくなる効果も期待できます。
パワハラの相談先に弁護士を選ぶ際の注意点
パワハラの相談先に弁護士を選ぶことには、注意点もあります。
最後に、弁護士へ相談する際の主な注意点を解説します。
弁護士に対応を依頼すると費用がかかる
弁護士は、公的機関ではありません。
そのため、弁護士へ相談したり具体的な対応を依頼したりする際は、弁護士報酬が発生します。
弁護士報酬は依頼先の事務所によって異なるため、初回の相談時などにトータルの費用を確認しておくとよいでしょう。
弁護士事務所によって専門分野が異なることがある
弁護士は、事務所によって得意とする分野が異なることがあります。
よりスムーズかつ有利に解決を図るには、パワハラ問題に強く対応実績が豊富な事務所を選ぶことをおすすめします。
なお、Authense法律事務所には職場内でのトラブルに強い弁護士が多数在籍しており、安心してご相談いただけます。
訴訟を起こせば会社にいづらくなるおそれがある
弁護士へ依頼する場合、相手方への損害賠償請求や刑事告訴を前提とすることが一般的です。
特に会社を相手方として訴訟を提起した場合、その会社の規模などによっては、その後会社にいづらくなるおそれがあります。
そのため、今後もその会社に在籍したいと考える場合は、弁護士へ相談したうえで、具体的な対応方法をより慎重に検討することをおすすめします。
まとめ
パワハラの被害に遭った場合の相談先について解説しました。
職場でパワハラの被害に遭った場合は、状況に応じて適切な先へ相談しましょう。
中でも、相手方や会社に対して損害賠償請求や刑事告訴などの法的措置をとりたい場合は、弁護士へご相談ください。
弁護士へ相談することで、そのケースにおける法的措置の可否などの見通しが立てられ、具体的な対応方法が検討しやすくなります。
また、弁護士へ依頼した場合、相手方との交渉や損害賠償請求などを任せることも可能となるため安心です。
Authense法律事務所ではパワハラ被害者からの相談や法的措置などの対応に力を入れており、多くの解決実績があります。
パワハラの被害に遭ってお困りの際は、一人で悩まず、Authense法律事務所までまずはお気軽にご相談ください。
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