コラム
公開 2023.11.28

盗撮はどんな犯罪になる?該当する法律や罰金を弁護士がわかりやすく解説

盗撮行為をしてしまった場合、犯罪行為であるのか、逮捕される可能性はあるのかなど不安に感じることでしょう。

下着など、通常衣服で隠れている箇所の盗撮は、犯罪行為に該当します。
では、盗撮をした場合、具体的にどのような罪に該当し、どのような刑罰を受ける可能性があるのでしょうか?

今回は、盗撮が該当し得る罪や罰則、盗撮をした場合に弁護士へ相談するメリットなどについて弁護士が詳しく解説します。

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盗撮とは

盗撮とは、一般的に相手の了承を得ることなく、相手の容姿を撮影することを指します。
中でも、通常衣服で隠れている下着や身体を盗撮した場合は、犯罪にあたります。

盗撮にはさまざまなケースがありますが、代表的なものには電車の中で女性のスカートの中に自分のスマートフォンを差し向けて下着を撮影するものや、トイレや更衣室などに隠しカメラを仕掛けて撮影するものなどが挙げられます。

盗撮を取り締まる主な法令と罰則

盗撮行為は犯罪です。
では、具体的に盗撮はどのような罪になり得るのでしょうか?
ここでは、2023年7月13日に新たに施行された「撮影罪」を含め、盗撮が該当する可能性のある罪を紹介します。

各都道府県の迷惑行為防止条例

盗撮は、各都道府県の迷惑行為防止条例違反となる可能性があります。
条例の内容は都道府県によって異なるため、その地域の条例の参照が必要です。

参考までに、東京都の迷惑行為防止条例(正式名称は「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」)5条1項2号では、次の場所で人の通常衣服で隠されている下着や身体を撮影する行為や撮影のためにカメラを差し向けたり設置したりする行為が規制対象とされています。

  1. 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部または一部を着けない状態でいるような場所
  2. 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定または多数の者が利用し、また出入りする場所または乗物

これに違反した場合は、原則として6か月以下の懲役または50万円以下の罰金の対象となります(東京都迷惑防止条例8条1項2号)。
また、実際に撮影した場合は、法定刑が1年以下の懲役または100万円以下の罰金へと引き上げられます(同2項1号)。

なお、必ずしも各都道府県の迷惑防止条例の処罰対象が統一されているわけではなく、児童ポルノ製造罪も保護対象は児童のみであったことから、後ほど紹介する「撮影罪」が新設されました。

軽犯罪法

盗撮行為が「のぞき行為」に該当する場合は、軽犯罪法に違反する可能性があります。
軽犯罪法によると、「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」は、拘留又は科料に処されることとされています(軽犯罪法1条23号)

拘留と科料は、それぞれ次の刑罰です。

  • 拘留:1日以上30日未満の期間刑事施設に拘束する刑罰
  • 科料:1,000円以上1万円未満の財産を奪う財産刑

刑法

盗撮をするために住居や店舗などへ侵入した場合は、刑法の住居侵入罪や建造物侵入罪にあたる可能性があります。
住居侵入罪や建造物侵入罪とは、正当な理由がないのに人の住居などに侵入した場合や人が看守する建造物などに侵入した場合に該当する罪であり、3年以下の懲役または10万円以下の罰金の対象となります(刑法130条前段)。

盗撮目的での侵入は「正当な理由」とはいえないため、これらの罪に該当する可能性があります。

児童ポルノ禁止法

児童ポルノ禁止法(正式名称は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」)は、児童買春や児童ポルノを規制し児童の権利を擁護することを目的とする法律です。

盗撮をした被写体が18歳未満の実在する児童であり、かつ児童ポルノ禁止法上の「児童ポルノ」に該当する場合は、盗撮による児童ポルノ製造罪として、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処される可能性があります(児童ポルノ禁止法7条5項)。
児童ポルノ禁止法は、児童ポルノを所持や保管しているだけであっても処罰の対象となり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処される可能性があります(児童ポルノ禁止法7条1項参照)。

性的姿態撮影等処罰法(通称「撮影罪」)

性的姿態撮影等処罰法(正式名称は「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」、通称「撮影罪」)は、2023年7月13日に新たに施行された法律です。

この法律では、次のいずれかに該当する行為をした場合、3年以下の懲役刑または300万円以下の罰金の対象となります。
また、未遂に終わったとしても処罰の対象とされることが明記されています。

  1. 正当な理由がないのに、ひそかに次の姿態等(対象性的姿態等)を撮影する行為(人が通常衣服を着けている場所で不特定多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出している場合を除く)
    • 人の性的な部位(性器、肛門、これらの周辺部、臀部、胸部)や人が身に着けている下着
    • わいせつな行為や性交等がされている間における人の姿態
  2. 暴力やアルコールの影響などにより、同意しない意思を形成したり表明したりすることを困難な状態にさせ、またはその状態にあることに乗じて対象性的姿態等を撮影する行為
  3. 行為の性質が性的なものではないと誤信をさせたり特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせたりして、人の対象性的姿態等を撮影する行為
  4. 正当な理由がないのに、13歳未満の者を対象としてその性的姿態等を撮影する行為
  5. 正当な理由がないのに、13歳以上16歳未満の者を対象として5歳以上年長の者がその性的姿態等を撮影する行為

都道府県の迷惑行為防止条例より罰則も加重されており、今後盗撮行為が問題となる場合は、この撮影罪の適用が争点になるものと思われます。

犯罪となり得る盗撮の例

犯罪行為となり得る主な盗撮行為の例には次のものが挙げられます。

電車や駅の階段で女性のスカートの中を盗撮する

電車や駅の階段などで女性のスカートの中を盗撮する行為は、原則として撮影罪や都道府県の迷惑行為防止条例違反に該当します。
撮影罪は、未遂であっても犯罪となるため、スマートフォンをスカートの中に差し向け たものの、画角がズレて下着などが映っていなかったとしても処罰の対象となり得ます。

ショッピングモールのトイレに小型カメラを設置する

ショッピングモールのトイレの個室内に小型カメラを設定する行為は、原則として撮影罪や都道府県の迷惑行為防止条例違反に該当します。
また、盗撮用の機器を設置する目的でショッピングモール内のトイレに侵入したことで、建造物侵入罪に問われる可能性もあります。

盗撮による犯罪による逮捕のパターン

盗撮が発覚すると逮捕される可能性があります。
逮捕されると、その後最大48時間警察の留置施設に身柄が留め置かれ、その後検察に送致されます。

その後は24時間以内に勾留の要否が決まり、勾留が必要であると判断された場合はその後10日間検察によって身体が拘束されます。
また、この勾留期間はさらに10日間伸長される可能性があるため、起訴か不起訴が決まるまで最大23日間(=警察:48時間+検察:24時間+10日+伸長分:10日)拘束されることとなります。

逮捕には、次の2種類があります。
現行犯逮捕が一般的であるものの、防犯カメラなどの証拠から後日逮捕されることもあります。

現行犯逮捕

現行犯逮捕とは、現に犯行に及んでいるときや犯行直後の逮捕を指します。
たとえば、駅で女性のスカートの中にスマートフォンを入れているときや、浴場を覗いているとき、犯行の直後に「その人が盗撮犯です」と追いかけられているときに取り押さえられる場合などが該当します。

現行犯逮捕には、逮捕状を請求するなどの手続きを経る必要がありません。
また、現行犯逮捕できるのは警察官などに限られず、誰でも行うことができます。
なぜなら、状況から見て犯罪行為が行われたことや犯人が明白であり、取り違えなどが起きる可能性が低いためです。

後日逮捕

現行犯逮捕に対し、通常の逮捕を「後日逮捕」や「通常逮捕」といいます。
後日逮捕とは、被疑者が犯罪の現場から離れてから行われる逮捕のことです。

後日逮捕をすることができるのは警察官などに限られるうえ、逮捕するには逮捕令状の発付を受ける必要があります。

勘違いしている方が時折いらっしゃいますが、「逮捕=有罪」ではありません。
逮捕は逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがある、そして逮捕の必要性がある場合にのみされるものであり、逮捕されないまま起訴され、有罪となることもあります。

一方で、逮捕されたものの、被害者との示談が成立した場合や証拠が不十分、嫌疑不十分であるなどの事情によって不起訴処分や起訴猶予 となることもあり得ます。

盗撮が見つかった場合に弁護士へ相談するメリット

盗撮が発覚した場合は、できるだけ早期に弁護士へ相談し、依頼することをおすすめします。
盗撮事件について弁護士へ相談する主なメリットは、次のとおりです。

逮捕を防げる可能性がある

逮捕されると外部との連絡が取れないまま最大23日間拘束されることとなり、仕事などの社会生活に影響が及ぶ可能性が高くなります。
そのため、被疑者としては逮捕されることはできるだけ避けたい(または拘束期間をできるだけ短くしたい)と考えることでしょう。

先ほど解説したように、逮捕は逃亡や証拠隠滅のおそれがある、そして逮捕の必要性がある場合にのみ行われるものです。
弁護士から捜査機関に対して逃亡や証拠隠滅のおそれ、逮捕の必要性がないことを説明することで、逮捕されないまま捜査が進む可能性が高くなります。

示談交渉の結果不起訴処分が得やすくなる

示談とは、加害者が被害者にまとまった示談金を支払って謝罪をし、被害者がこれを受け入れて許す ことです。
示談はあくまでも民事の話であり、逮捕や有罪・無罪などの刑事の世界の話ではありません。

実際は、被害者との示談が成立している場合、一定程度の被害回復がなされたとして不起訴処分となる可能性が高くなります。
そのため、盗撮をしてしまった場合は、被害者との示談成立を目指すこととなります。

しかし、盗撮事件の場合は自分で示談交渉をしようにも、被害者の連絡先がわからないことが少なくありません。
また、捜査機関を通じて被害者の連絡先を知ろうにも、その犯罪の性質上、被害者から拒否されることが一般的ですし、仮に連絡先を知れたとしても連絡自体を拒否して取り合ってもらえないことがほとんどだと思われます。

一方、弁護士を通じて示談を申し入れる場合は、加害者に開示しないことを条件として被害者が住所や氏名を開示することに承諾してくれる可能性が高くなります。
これにより、代理で示談交渉を始めることが可能となり、適切な賠償と今後の二次被害や不安に配慮したうえで、無事に示談がまとまれば不起訴処分となる可能性があります。

執行猶予となるためのアドバイスが得られる

日本では、起訴された場合99%以上の確率で有罪判決が下されるといわれています。
もちろん、盗撮行為の態様や被害弁償の進度、前科前歴といった個別事情によりますが、状況によっては、執行猶予が付く可能性はあります。

執行猶予とは、刑の執行を一定期間の間、猶予してもらえる制度です。
たとえ有罪となっても執行猶予が付いた場合、問題を起こすことなく一定期間を過ごすことで、刑の言渡しがなかったこととなります。

弁護士へ依頼する場合は、たとえ起訴されても執行猶予付きの判決を得るためのアドバイスを受けることができます。

まとめ

盗撮行為は犯罪であり、各都道府県の迷惑行為防止条例や新たに制定された撮影罪などに抵触する可能性があります。

盗撮行為が発覚すると、逮捕される可能性が否定できません。
万が一盗撮行為をしてしまった場合や、盗撮をしたと疑われてお困りの場合は、性犯罪問題に詳しい早期に弁護士へご相談ください。

Authense法律事務所には、性犯罪トラブルに詳しい弁護士が多数在籍しています。
盗撮にまつわるトラブルでお困りの際は、Authense法律事務所まで早期にご相談ください。

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