リーガルエッセイ
公開 2020.12.01 更新 2021.07.18

禁止行為への抑止力

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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スケボー禁止場所に立ち入りで書類送検

先日、スケートボードが禁じられた場所に立ち入ったとして20代の男性4人について、警察が、軽犯罪法違反(立ち入り禁止場所等侵入)の疑いで書類送検予定であることが報じられました。
軽犯罪法には、「入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入った者」について拘留または科料に処するとする条文があります。
このたびスケボーをするために男性らが立ち入った場所には、スケボーをするための立ち入りを禁止するという案内表示が60枚以上も設置してあったとのこと。
立ち入った男性らにおいても、そこが立ち入り場所であることは十分認識しえたといえそうですよね。
軽犯罪法違反が成立することは法的に問題なさそうですが、とはいえ、その法定刑をみると、1日以上30日未満、刑事施設に拘置するという拘留、1000円以上1万円未満お金を払わされるという過料、いずれも、かなり軽い刑罰です。

この報道を見たとき、「なぜ建造物侵入罪が成立しないのか?」と思うかたもいるかもしれません。
私も、報道を見たとき、すぐ、建造物侵入は成立しないのかな?と思いました。
建造物侵入ということであれば、法定刑は3年以下の懲役または10万円以下の罰金。
軽犯罪法違反の罪よりだいぶ重くなります。
ただ、建造物侵入罪が成立するには、今回男性たちが立ち入ったとされる場所が、建造物の敷地といえる必要があります。
過去の裁判例で、建造物の敷地といえるためには、その土地が、建物に接してその周辺に存在し、かつ、管理者が外部との境界に門や塀等の囲いを設置することにより建物の附属地として建物利用のために使われるものであることが明示されていることが必要であるとしています。
私はこの現場に行ったことがなく、どのような場所なのかわからないのですが、写真を見る限り、囲いに囲われているようには見えず、建物利用のために使われる場所として外部と区別されている様子はうかがえません。
外部との区別がされておらず、建物の敷地といえるような場所ではなかったとすると、その場所の利用のしかたとして禁じられた行為をするために立ち入った事実があったとしても、建造物侵入罪成立の基礎を欠くといえそうです。
だからこそ、今回の送致事実も軽犯罪法違反だったのだろうなと思います。

周囲の安全確保のため、「この場所で〇〇をすることは禁止」という案内表示はよく見かけます。
ただ、実際は、その禁止に反して場所が利用されていることもよくありますよね。
今回の警察の対応は、たとえ刑罰としては軽い罪であっても、その場所にいる人たちの安全確保のために徹底した取り締まりを行うという厳しい姿勢を見せたという意味で、禁止行為に対し一定の抑止力を持つのではないかと思います。

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