リーガルエッセイ
公開 2020.11.24 更新 2021.08.13

虐待の4類型

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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心理的DV

先日、全国の児童相談所が2019年度に児童虐待として対応した件数が19万3780件に上ったことが厚生労働省のまとめでわかったと報じられました。
統計を始めて以来、毎年件数は増加しているとのこと。
つまり、この件数は過去最多。
厚生労働省は、警察との連携強化が進んでいることを件数増加の原因のひとつとして挙げているそうです。

そして、このたびの報道で、対応した虐待の類型別割合も報じられていました。
虐待には4類型があるとされています。
身体の虐待、ネグレクト(育児放棄)、性的虐待、心理的虐待の4類型です。
このうち、最多は心理的虐待で、全体の56.3%を占めたとのこと。
心理的虐待というのは、子どもの心、自尊心を傷つけるようなことを繰り返し言ったりすること、子どもの呼び掛けを無視すること、兄弟間で差別的に扱うこと、子どもの目の前で家族に暴力を振るう、いわゆる「面前DV」などをいいます。
報道によれば、心理的虐待の中でも、この面前DVについて警察から通告される件数の増加が目立つとのことです。

警察による面前DVの通告があるということは、その前提として、警察が介入するようなDVが少なくとも同じだけ存在しているということですよね。
もちろん、ここに数字として表れてこないDV、面前DVも存在するはずです。

コロナ下で家族が家庭内で過ごす時間が増えたことに伴い、DV相談も増えており、感染の急拡大が懸念されている今、さらなるDV相談増加も懸念されます。
そして、そこには、そのDVが目の前で行われることにより深く傷つく子どもの存在も。
昔、検察官としてDV被害者である妻から被害状況を聴取したことがあります。
これまでどんな思いでDVに耐えてきたかという話を聞いていたとき、その女性が、「私がこの被害を警察や周囲に訴えることで、私は救われるかもしれないけど、子どもたちは、親が犯罪者になってしまったり、これをきっかけに離婚して父をなくしてしまったりする。そのことを考えたら、被害を訴えることができませんでした」と言っていました。
その気持ちを聞いて、ただただ胸が苦しくなりながら、そのかたの力になるようなことをどれだけお伝えできたかは自信がありません。
もしかしたら、その女性のように、DV被害を受けながら、同居する子どもの環境を変えないように、自分さえ我慢すればという思いでいるかたもいるかもしれません。
そのようなかたに、ご自身を守ること、そしてそのことがそばにいる子どもをも守ることにつながることを大事にして頂きたいと心から思います。
DVの被害に遭われている、離婚を考えている、でも、どうやって一歩を踏み出せばいいかわからないというかた、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
一緒に解決策を考えましょう。

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