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「アラジンのランプ」と偽って詐欺
今でも鮮明に覚えているのですが、昔、中学生だった私は、何かの雑誌の後ろの方に、「これを使えばだれでも集中して勉強ができるようになる」という説明が付されている小さな機械の通信販売の広告を見つけ、「なんとかお金をかき集めてこの機械を買うことができないか」と思っていたことがありました。
とにかく勉強ばかりしていた中学生時代。
でも、やっぱり中学生で思春期真っ盛りだったので、ときには、友達のこと、恋愛のことで気持ちが乱れ、勉強に100%打ち込めない日があり、そのことをとてももどかしく思っていた日々でした。
金額は覚えていないのですが、たぶん、ためていたお年玉では遠く及ばないような金額だったはず。
説明によると、その機械に手をかざすと、緑か赤のランプが点灯するとのこと。
そして、緑のときは、すでに集中できている状態だからそのまま勉強すればよし。
仮に赤のランプが点灯しても、そこから何十秒か手をかざし続ければ、機械が発するエネルギーにより集中力が高まり、最終的に集中力が頂点に達したタイミングで緑のランプが点灯するに至るため、そのタイミングを逃さずに勉強に着手できれば最高のパフォーマンスを発揮できるという記載がありました。
結局、元手がなく購入に至りませんでしたので、効果のほどはわかりません。
今は、何かに気持ちが乱されて集中できないという悩みがないので、仮に同じ広告があっても気にも留めないと思うのですが、でも、「これはアラジンのランプです。中から魔人が出てきてあなたの望みを3つかなえてくれますよ」と言われたら、私はどうするか?と考えてみました。
さすがに今の私が買うことはないと断言できます。
先日、インドで、男性2人が、ランプを、「アラジンと魔法のランプ」に登場する本物だと偽って、地元の医師に日本円にして約980万円で売りつけたという記事をみつけました。
医師はどうして信じたのか?
男性2人のうち、1人が魔術師のような格好をして、魔人であるジニーのふりをしたそうなのです。
これにより、医師は、そのランプは本当に魔法のランプだと信じ、お金を払ったそうなのですが、後に、男がジニーに扮していただけだ、そのランプには魔法の力が一切ないということに気付いて警察に通報したとのこと。
そして、この男性2人が同じ手口で複数の詐欺に及び、被害総額が数千万円にものぼるということ。
そんなばかな、と思いますか?
詳しい背景事情は報じられていなかったのでわかりません。
でも、だまされてしまった被害者のかたたちは、もしかしたら、そのような魔法にすがらなくてはならないような、現実的な努力や手段では解決できないような大変な事情を抱えていたのではないか、そこにつけこまれてしまったのではないか、などと想像すると、事件の見え方が少し変わるように思えませんか?
詐欺罪は、被疑者が、金品をだまし取ろうとして、被害者にうそを言って、そのうそを信じ込ませ、被害者がだまされた状態で被疑者に金品を交付したという犯罪です。
被害者が被疑者のうそを見破り、だまされていなかったけれど、何か別の意図をもって金品を渡したという場合、詐欺は既遂にならず、未遂罪の成立にとどまります。
既遂に至っているかどうかは処分、量刑に影響するので、捜査で明らかにしなければなりません。
ですので、被害者の取調べをするときには、被害者が、被疑者のうそを聞いたとき、それをどのように受け止め、なぜ信じるに至ったかというところを丁寧に聴取していきます。
特に、そのうそが、「なぜそれを信じてしまったのだろう」と疑問に感じてしまうときはなおさらです。
被害者は、だまされていなかったとしてもお金を渡す理由があったのか?
もし、だまされていなかったら大事なお金を渡すはずがないとすれば、たとえ、一定の人にとっては「そんなうそ見破れたのでは?」と思えるような内容であっても、その被害者にとっては信じてしまう原因となる事情が隠されているはずなんです。
その原因となる事情は、ときに、被害者のわらにもすがりたいという思いだったりすることがあります。
そして、こういう事情があるからこそ被害者にはこのうそが本当に聞こえるはずだ、簡単にだまされて金品を差し出すはずだと被疑者も認識していたからこそそのような事情につけこんでうそをついたはずなんです。
もし、報道された事例が起きた場合、捜査機関としては、このような点を両者から丁寧に聞き取り、必要に応じて裏付け捜査をすることが必要になるのだろうと思います。
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