リーガルエッセイ
公開 2020.10.20 更新 2021.08.13

コロナで離婚は減った?

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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少し前になりますが、厚生労働省の人口動態統計(速報値)で、令和2年1月から6月に離婚した夫婦は10万122組となり、昨年の同じ時期に比べて1万923組減ったと報じられました。
「コロナ離婚」が増えるだろうなどと言われていましたが、実際は減ったと言われている離婚。
いろいろな記事を読んでいると、「実は、未曽有の事態に夫婦の結束は強まったのではないか」などと推測するものもありました。
たしかに、そういうご夫婦もあるかもしれませんよね。
家で一緒に過ごす時間が増えることで、これまで見えていなかった、お互いが仕事をする姿、家事や育児に奮闘する姿を見ることで、改めてお互いに対する尊敬、感謝が生まれたという人もいると思います。
また、感染症の不安を抱える日々、お互いの存在に救われ、改めてその大切さを感じた人もいるのだと思います。
でも、一方で、お互いの価値観に大きな隔たりがあることを突き付けられ、愕然としてしまったり、今後ともに生きていく気力が失われてしまったりという人もいるのではないでしょうか?
コロナの感染拡大で、お互いの衛生管理や危機意識にギャップを感じたということもよく聞きます。
たとえば、感染を防ぐために、外出は最低限にし、帰宅したら、外から持ち込んでしまっているかもしれないウイルスを気にして、まずは、外で着ていた服を脱いで、お風呂に入って髪も洗って、うがい、手洗いをしてようやく部屋に入る、という予防を徹底したいという妻。
一方、さすがに回数は減ったものの、会社の同僚と飲み会をすることもある夫は、うがいは自分からはしないし、手洗いもときどき忘れている、お風呂も、疲れていたら翌朝まで入らず、そのまま布団に入ってしまうこともある。
そんな夫婦の間では、妻からすると、家族をコロナ感染から守るために、できる限りの対策を講じたいのに、なぜもう少し危機意識を持ってくれないのか、予防のための対策をとってくれないのか、と思うでしょうし、夫からすると、なぜそんなに神経質になるのか、ぴりぴりして気も休まらない、などと思うかもしれません。
お互いに対する不満がふくらんでしまいそうですよね。
そして、こういうお互いの意識のギャップが気になりだすと、いろいろな場面で、あれもこれも、やっぱり私たちは考えかたが違う、やっぱり折り合えない、とふくらんでいき、最終的には、「私たちは、根本的な価値観が違うんだ。生き方が違うんだ」という考えにまで発展することもあると思います。

私は、夫婦がお互いの考え方の違いに気付くこと自体は、夫婦にとってマイナスだとはいえないと思います。
その気付きがいろいろな場面で現れたときというのは、お互いが今後の生き方について考えるきっかけが現れた、というだけのことなんだと思うのです。
何かについての考え方が違う、ということは、それ自体がいいも悪いもない、単に、違う、というだけのこと。
その上で、その違いを踏まえてどうするのか、それを考えるだけ。
お互いここが違う、ということに気付いたとき、そこに評価を加えて、悪いことのように受け止めてしまうと、せっかくの気づきに蓋をしてしまって、ついつい見えないふりをしたり、感じないふりをしたりして、でも相手への不満が募ったり、現状にいらいらしてストレスをためて過ごしてしまったりということもあるかもしれませんが、それはお互いにとって、いいことはありませんよね。

「コロナを経て離婚の増加が予想されたが、実は減っている」と判断するにはまだちょっと早いのかなと思います。
まだまだコロナが収束したとは言えず、今後、冬に向けて感染が拡大するのではないか、とも言われている中、落ち着いて夫婦の今後について考える余裕などない、自粛が明けて、自粛前の生活を取り戻すことで精いっぱいというかたも多くいて、むしろ、夫婦関係について考え、動き出すかたが増えるのはこれからなのかなとも思っています。

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