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先日、都内の区立小学校で、教員が、担任する6年生のクラスの児童に暴行したとして、罰金10万円の略式命令となったと報じられました。
報道によると、この教員は、運動会の組体操練習中、児童がほかの児童に話しかけたことについて、注意したものの話をやめなかったとして、児童の背中をたたいたり、わき腹を蹴り上げたりしたとのこと。
そして、その児童は、その後小児心身症と診断されて不登校になったと報じられています。
学校教育法11条は、「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない」と定めています。
ここで、加えることができるとされている「懲戒」としては、まず、学校教育法施行規則に定められている退学、停学、訓告がこれに当たります。
それ以外だと、放課後等に児童を教室に残すこと、授業中教室で立たせることなどは懲戒の範囲内として認められるとされています。
逆に、禁止される体罰というのは、身体に対する侵害を内容とするもの、肉体的苦痛を与えるようなものです。
身体に対する侵害を内容とする行為というのは、たとえば、危険な行為をした児童の背中を足で踏みつけるとか、授業態度について指導したが反抗的な言動をした児童らの頬を平手打ちするとか、ふざけていた生徒に、持っていたボールペンを投げつけるとかいう行為がこれに当たるとされ、肉体的苦痛を与えるような行為というのは、たとえば、放課後、児童を教室に残していたところ、児童がトイレに行きたがったのに、教室の外に出ることを許さないとか、宿題を忘れたことに対するペナルティーとして教室の後ろで正座で授業を受けるように言い、苦痛を訴えた児童にそのままの姿勢をとらせたとかいう行為がこれに当たるとされています。
今回報じられた教員の行為は、報道によれば、児童の背中をたたいたり、わき腹を蹴り上げたりしたというもの。
どのような経緯があったとしても、法律で禁じられる体罰に当たることは明らかであるといえそうです。
暴行罪として罰金刑に処せられるというのはしごく当然の結果だと思います。
教員の処分で終わらせずに考えたい 「体罰はなぜ禁止されているのか」
私は、常々、学校の先生は、授業やそれ以外の事務作業を正確にこなすだけでなく、いろいろな子どもたちと日々全力で向き合い、辛抱強く子どもたちを見守ることが求められる本当に大変な仕事だなと思っています。
当然、学校の先生も人間ですから、ときには、必ずしも正しいとはいえない言動に出てしまうということがあるのも仕方のないことなのかもしれません。
でも、何があっても超えてはいけない一線というものがあって、そのひとつが体罰なのだと思います。
万一その一線を超えてしまったとき、今回のように刑事責任を科されることになるのは当然です。
もし、「頭ではわかっているけど、現場はものすごく大変なんだ。そんな丁寧に言葉を尽くして辛抱強く対応する余裕なんかない」という現状があったとしたら、それは、そのような余裕のない状態で児童と向き合わなければならないという体制自体を考え直さなければならないはずです。
また、もしかしたら、「教育においては、ときに、体罰が必要な場面がある」という考えのかたもいるかもしれません。
だとしたら、教育とはどうあるべきなのか、体罰はなぜ禁止されているのか、というところから共通認識を持つ必要があるはずです。
ある一人の教員の行為として処分し、当該教員を非難することだけで終わらせずに、なぜ、体罰に及んでしまったのか、教員個人の原因としてどのようなものが考えられるのか?教員個人を超えて学校全体で考えるべき原因はないのか?などと深く掘り下げて考える必要がありそうです。
自分の子どものころを思い出しても、子どもには、学校生活で起きる出来事が自分にとっての全世界であるかのように見える時期があるように思います。
その学校で体験するひとつひとつが子どもの今後にとって本当に大きな意味を持ってきます。
この報道を見て、一教員による過ちとして非難しておしまいにするのでなく、教育現場を中心とし、教育とはどうあるべきか、体罰はなぜ禁止されているのか、現場の教員にはそれぞれ理想の教育を実現するための環境が整っているのか、などということを改めて考えるきっかけにしなければならないと思います。
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