リーガルエッセイ
公開 2020.08.28 更新 2022.09.13

「職務質問」 警察官から職質されるのはどんなとき?

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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お恥ずかしい話なのですが、私は、過去に職務質問を受けたことが2回あります。
1回目は司法修習生のとき、2回目は検事になった後のことです。
いずれも、日中、ただただ普通に、人通りのある歩道を歩いていたときのことです。

職務質問については、警察の仕事を密着で報道する番組があったり、刑事ドラマでよくみられたりする影響か、「職質(しょくしつ)」などという略称とともに、意外と身近でよく聞く言葉ではないかと思います。
職務質問は、警察官職務執行法という法律に定められています。
警察官は、「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる」とされています。

ちなみに、私は、警察官から職務質問をされたとき、簡単な質問をされて、それに対し素直に受け答えをし、もちろん、すぐに「ご協力ありがとうございました。行かれていいですよ」と言われ、その場を解放されることになったのですが、司法試験を経て、職務質問とはどのようなときになされるものか、それなりに知識を持っていた私としては、また、2回目においては、検事として日々犯罪と向き合う毎日を過ごしていた私としては、果たして自分の行動のどこが「異常な挙動」「何らかの犯罪を犯し、犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者」であると警察官に思われてしまったのか確認したくなりますよね。
そもそも、これは職務質問だったのか、というところから確認すべく、「これは警職法2条の職務質問だったのですか?だとしたら、私は、どういう点をもって異常な挙動だと思われたのか、今後のために教えて頂けますか?」と質問してみました。
これに対し、2回目のときの警察官は、「気になったのは、歩き方です。夜間、お酒を飲んで、というならわかるのですが、日中、人通りもある歩道で、成人の女性が、歩道に座って道端を眺めてみたり、道をまっすぐ歩くのでなく、周囲をきょろきょろしながら、蛇行しつつ歩いていらしたので、ちょっと…。念のため職務質問させてもらいましたが、気にしないでください」と丁寧に教えてくださいました。
以後、お忙しい警察官のかたに余計なお手間をおかけしないように、歩き方には気を付けるようにしています。

思い入れの強さのあまり、少し経験談が長くなりましたが、この職務質問については、最近、警察官が振り込め詐欺のいわゆる受け子(被害者のもとに現金を受け取りに行く役の者)を職務質問したことで犯人逮捕につながったという報道を何度か目にしました。
具体的に、どんな言動をもって不審な挙動と評価するかについては、ある程度警察官の勘に委ねられるところだと思います。
報道によれば、スーツのズボンのすそがほつれていたとか、ジャケットのサイズが大きく見えたとか、スーツを着ている男性の靴下の長さが短かったとか、そのようなちょっとした点に違和感を感じたとのこと。
一方で、服装の違和感に端を発しての職務質問により受け子が逮捕される事例が相次ぐに従い、当然、犯人グループの側でも、その違和感をなくすための対応をしてくるでしょうから、攻防が続くと言えそうです。

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職務質問への対応

このように、職務質問が警察官の勘による違和感に端を発して行われることを考えると、その勘は常に当たるわけではなく、もしかして、自分の身にも降りかかるのではないか、そんなときどう対応すればいいのかと不安になるかたもいらっしゃるのではないでしょうか。
また、ご自身に、警察に隠しておきたいと思う何かがあったりすれば、特にその不安は大きいものだと思います。

前提として、職務質問では、逮捕のための要件(たとえば、現に犯罪を犯したことを認めたことや逮捕状があることなど)を満たしていないのに身柄を拘束したり、意に反して警察署などに連れて行ったりすることはできません。
ですから、いくら職務質問をされても、それを無視してその場を立ち去ったり、質問に応えなかったりすることはもちろんできます。

ただ、警察官からすると、そのような対応を経て、「やはり何か隠しているのではないか」という疑惑を深めてしまう可能性があるのも事実だとは思います。
その場合、質問が長引いてしまったり、応援の警察官が来てしまったりして、かえってややこしい事態になるということもあるかもしれません。

何も隠すこともないのに、余計な勘繰りを入れられるのが嫌だと思えば、その場で最低限の受け答えをするのもひとつですし、そうしたくても急ぎの予定があって時間がないときは、その事情を率直に伝え、改めて連絡するように言って名刺を渡してもいいでしょう。
簡単な受け答えをし、その後話が長くなりそうならその時点で打ち切ってもいいかもしれません。
ご自身で警察官と話すことに積極的になれない事情を抱えていらっしゃるかたについては、ご自身のお名前や連絡先を警察官に伝えた上で、弁護士に相談してから連絡すると対応されるのもひとつです。
この職務質問時のやりとりは、後に犯罪の嫌疑が認められて事件化されたとき、報告書として証拠化されます。
ひとつひとつの受け答えが重要な意味を持つことがありますので、不安なまま対応しないことが大切です。
背景にある事情を丁寧にお伺いした上で、どのような対応をすべきか、先の見通しを立ててアドバイスをさせて頂きます。弁護士にご相談ください。

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