リーガルエッセイ
公開 2020.08.20 更新 2021.07.18

「18歳未満だとは知らなかった」という言い分はそう簡単には通りません。

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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18歳未満との交際

先日、ある芸能人が17歳の女子高生と深夜に飲食した後、ホテルに滞在していた疑いがあることが報じられました。
この報道を受け、スポーツ紙などが、この芸能人には、条例違反の捜査が進むのではないかとの推測も報じられています。
この件については、そもそも報道されているような事実があったのかどうかはわかりません。
ですので、いったんこの件を離れますが、これまでにも、しばしば、18歳未満と関係を持ったとして書類送検される事案が報じられてきました。
18歳未満の子と関係を持つのはまずい、という認識は一般的に浸透していると思うのですが、具体的にどんな犯罪なのかということは意外と知られていないかもしれません。

18歳未満だと知らなかったら?真剣に交際していたら?

18歳未満の子と関係を持つことは、青少年保護育成条例違反になる可能性があります。
条例なので、地域によって多少違う部分もありますが、東京都青少年保護育成条例では、「何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行ってはならない」と定めています。
違反したら、その法定刑は、2年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
青少年というのは、18歳未満の者を指します。
検察官だったとき、この条例違反の担当を務めたことがありますが、よくある被疑者の言い分が「相手が18歳未満だとは知らなかった」というものです。
年齢が犯罪成立の要件になっていますから、年齢の認識は必須です。
でも、「18歳未満だとは知らなかった」という言い分はそう簡単には通りません。
二人はどのようにして出会ったのか、青少年の外見、服装はどのようなものだったか、出会った後、どのようなやりとりをしてきたか、やりとりの中に、通学や年齢をうかがわせるような内容はなかったかなどを詳しく調べます。
「相手が18歳だと言っていたんだ」という言い分もなかなか通りません。
たしかに相手が自分の年齢を「18歳だ」とうそを言うケースもあります。
でも、ほかに何も情報なくして、相手が言ったその言葉だけで18歳以上だと思っていたというのはなかなか通用しないといっていいでしょう。
身分証を見せてもらったけど、それが実は精巧に作られた偽造免許証で、その記載を見て18歳以上だと信じたという事実があれば故意がなかったとされる可能性もあるかもしれませんが、それも一見して偽造したものとわかるようなものであればやはりそれを見て18歳未満でないと信じたという言い分は通りにくくなると思います。

「みだらな性交」というのも、なんだかよくわからない文言ですよね。
実際の事件でも、大人の側が、「自分は真剣に交際していたんだ。だから、みだらな性交じゃない」と主張することがあります。
そもそも、「真剣な交際とはなにか」と考えると、私も正直そこらへんは非常に苦手な分野なのでよくわかりませんが、いずれにしても、この言い分もなかなか通用しません。
かなり前の裁判例になりますが、婚約中の青少年や、これに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われた性交については「みだらな性交」にはあたらず処罰の対象外であるとしたものがあります。
婚約に準ずるような真摯な交際関係というと、結婚を前提としたお付き合い、ということになると思うので、認められるためのハードルは高いといえるでしょう。

いまや出会いのきっかけがSNSということはよくあること(のよう)ですので、知り合ったきっかけがSNSだったからといってそのことだけで真摯な交際関係ではないという評価がされることはないと思います。
でも、相手のことをよくわからないまま会うことになり、会ってお互いの関係を深める間もなく関係を持ちました、という状況では、「みだらな性交」にあたると評価されてしまう場合が多いのではないかと思います。

青少年と関係を持つことに関して、今回は条例違反をとりあげましたが、より法定刑の重い犯罪にもあたり得ます。
18歳未満の青少年と関係を持ち、これに関し対価を払えば児童買春の罪が成立しますし、青少年が13歳未満ですと、わいせつ行為をすれば強制わいせつ罪が成立します。

SNSにより青少年との接点が増えているともいえる今、このような犯罪について改めて正確な認識が必要になると思います。

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