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先日、殺人予備罪の被疑事実で男性が逮捕されたと報じられました。
その男性は、被害者を殺害しようと考えて、下見をしたり用具を購入したと見られているとのこと。
殺人予備罪というのは、人を殺害する目的で、殺人の実行を可能にしたり容易にしたりする準備行為をしたと認められるときに成立します。
具体的にどんなことをしたらこの準備行為にあたるのか、ということが法律で明確に定められているわけではありません。
ですので、殺人予備罪で逮捕するかどうかという場面でも、起訴する場面でも、裁判の場面でも慎重な検討がされるところです。
具体的にどんな行為が殺人予備罪にあたるのか?
冒頭に紹介した報道の事案を例に考えてみます。
「殺害しようと考えた」という点は内心に隠された部分です。
「下見」という点も、客観的外形的には、通常、「この人がある場所に行った」という行動として現れるだけですよね。
それを犯行場所の「下見」と認めるには、その場所でどのように行動していたかというさらに詳細な事実が明らかになったり、それらの行動に対し、評価が加えられる必要があると思います。
この点は報道の事案とは離れますが、たとえば、被害者宅の玄関前が見える場所に隠れ、一定時間、被害者宅の出入りを目視するという行動が防犯カメラ映像に残っていたという事実が認められたら、このような行動は、「下見」と評価される可能性がありますよね。
また、「用具の購入」という点も、その用具が何かにもよりますが、その用具を持っていたことが自動的に殺人の準備行為と認められるわけではなく、やはり、そう認められるためには評価が必要になると思うのです。
たとえば、包丁を持っていたとしたら、その包丁の形状によっては銃刀法違反にあたる可能性はありますが、包丁を持っていたことで自動的に殺害の準備行為といえるかというと、そこには飛躍があるといえるでしょう。
実際に、被害者に包丁を刺したとか、拳銃で狙いを定めて引き金を引いたなどの行為がなく、その前段階ですので、後に生じた結果をもとに遡って、ある行為が準備行為だったといえるかを判断することはできません。
そこが難しいところなのだと思います。
過去の裁判例では、たとえば、車いすを利用する被害者の後方に、灯油をしみこませた新聞紙を積み重ねるなどした行為が殺害の準備行為として認められたものがあります。
また、Aに対して恨みをもっていた被告人が、Aを殺害することをもくろんで、金づちをもってAの実家宅に侵入したものの、結果としてAが在宅しておらず、その場にいたBへの恨みもあり、Bを金づちで殴打して死亡させたという事案で、在宅しておらず殺人の実行に着手しなかったAに対する殺人予備罪が成立すると認められたものもあります。
裁判官の判断過程を見ると、被告人と被害者との関係性を丁寧に明らかにしていくことで、この事案では被告人が殺害の動機を形成していたと考えるのが自然であるといえるかを判断したり、その準備行為自体が、犯行に直結するような危険な行為といえるかを判断したり、個別事案に応じた慎重な判断を行っているといえそうです。
今後の捜査のゆくえに注目していきます。
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