リーガルエッセイ
公開 2020.08.11 更新 2021.08.13

少年法改正 「18歳と19歳」少年法の適用でどんな違いがあるのか

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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日本の民法は、今、成年になる年齢を20歳としていますが、法律の改正により、2022年4月からは成年年齢が18歳に引き下げられます。
選挙権は、18歳から認められることになりました。
このような動きに合わせて、今は20歳未満が適用対象となっている少年法を、18歳未満に引き下げるべきなのかという議論が行われているのはご存じですか?
先日、この議論をしている法制審議会(法務大臣の諮問機関です)の部会が開かれ、取りまとめに向けたたたき台(以下では、「取りまとめ案」といいます)が示されたと報じられました。

少年法が適用されるとどんな違いがあるの?

前提として、少年法の適用があるかどうかで扱いに大きな違いがあります。
少年法の適用があると、たとえば、検察官は「やむを得ない場合」でなければ裁判官に勾留を請求できないとされていたり、検察官は、捜査の結果、基本的に全件を家庭裁判所に送致しなければならないとされていたり、といった手続き面での違いがあります。
また、成年の刑事事件の場合は、起訴された事実が認められるかどうかという点が審判の対象となりますが、少年の場合は、非行の事実が認められるか、という点に加えて、再び非行に陥る危険があるかという点保護処分が相当かという点など「要保護性」と言われる点も審判の対象になる点が大きな違いだと思います。
少年法では、起訴された事件等について、少年が事件の本人であることが推測できてしまうような記事や写真を新聞等に掲載してはいけないともされています。

このような違いがあるのは、少年は、未成熟で、環境の影響を受けやすいので、非行に走っても、環境を整え必要な教育をすることでまたやり直すことができる可能性があるという考えに基づきます。

法制度の整合性?少年法の趣旨?

民法が、18歳以上を成年とし、公職選挙法の改正で18歳から選挙権を持つのだから、これに伴って、現在少年法の適用対象となっている18歳、19歳については、少年法の適用対象外とすべきではないかという考え方もあります。
法制度の整合性をとるべきだという考えです。

一方で、18歳、19歳はいまだ未成熟で、刑罰でなく環境調整や育成という少年法の趣旨がやはりあてはまるのではないかという考えがあります。

この点について、報道によれば、部会の取りまとめ案では、18歳、19歳を少年法の「少年」に当たるかについては明確にしていないようです。
取りまとめ案では、「18歳、19歳は、十分に成熟しておらず、刑事司法制度では、18歳未満とも20歳以上とも異なる取り扱いをすべき」との指摘があったと報じられました。
単純に、現行の少年法をそのまま適用としたり、完全に成年と同じ刑事手続きとしたりするのでなく、個々の手続ごとに検討するということなのかもしれません。
報道によれば、取りまとめ案では、18歳、19歳についても、検察官が基本的に全件を家庭裁判所に送致することとし、家庭裁判所が少年の処分に関わるシステムは維持しつつ、原則逆送の対象犯罪を広げるとされています。
逆送というのは、家庭裁判所が刑事処分相当と判断して、家庭裁判所から検察官に事件が戻されることです。
その後、起訴されれば刑事処分を受けることになります(少年法で、また家庭裁判所に戻る可能性もあります)。
少年法では、原則逆送となるケースを限定して定めているのですが、取りまとめ案では、この原則逆送となるケースを18歳、19歳について拡大しようというのです。
取りまとめ案では、18歳、19歳について、起訴された段階で、実名報道を可能とすることとされているとも報じられています。

この取りまとめ案に対しては、いろいろな意見がありそうです。
日本弁護士連合会の会長声明でも、この案に対し、18歳、19歳が少年法の「少年」に位置づけられるかの明確な位置づけがない点や、原則逆送事件の範囲が広がることや実名報道禁止の一部解除がなされることが少年のやり直しを妨げることになると懸念される点が指摘されています。

本当に難しい問題です。
少年による重大犯罪の被害に遭ったかたの思い、生育環境の影響を受けて非行に及んだ少年の立場、一度は非行に走ったものの、その後刑事処分でなく、少年法の用意した手続きを経てやり直せた少年の存在、被害に遭い命を落としたために、やり直しなどできない被害者のかたとご遺族の無念、少年法をめぐってはいろいろ考えなくてはいけない点があり、そのあまりの重さとなかなか向き合えず、実は、私は弁護士としてまだ少年事件を担当できずにいます。
この機会に勉強し、自分なりの向き合い方を考えなければならないなと思っています。

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