リーガルエッセイ
公開 2020.08.03 更新 2021.08.13

最高裁の判断は?GPSを取り付けて動静監視「見張り」にあたるか?

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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先日、ある2つの刑事事件について、7月30日に最高裁判所で判決が言い渡されることになったというニュースをとりあげました
「妻や元交際相手の車にGPSを取り付け、その動静を監視した行為が、ストーカー規制法でいう『見張り』にあたるのか」という点についての最高裁判所の判断が注目されていたところです。
そして、出た判断は、「見張りに該当しない」というものでした。

「見張りに該当しない」なぜ?

報道によれば、裁判長は、判決理由で、ストーカー規制法違反の「見張り」というのは、相手の住居などの付近で動静を観察する行為を指すのであり、遠隔で位置情報を得ていたことはこの「見張り」に当たらないと判断したとのこと。
裁判所の判断の詳細を読めていないのですが、この判断は、前回のエッセイでも触れた罪刑法定主義の考え方を徹底したものであるといえるでしょう。
検察官は、遠隔で位置情報を得ていた行為を見張りに当たらないとすることは、ストーカー規制法が、凶悪犯罪を未然に防ぐことを目的としている趣旨に反する旨主張したようです。

たしかに、凶悪犯罪を防がなければならないことは間違いありません。
でも、危険だから、条文からは明確に処罰対象になっていると明らかに読み取れるものでない行為を、条文を拡大解釈して処罰対象とすることはやはり罪刑法定主義の点から問題があると思います。
ですので、今回の最高裁判所の判断は、やむを得ないものだろうと思うのです。

一方で、GPSが犯罪に利用されていることも間違いありません。
先日も、ある強制性交致傷罪に問われた被告人に対する判決で、被告人が、犯行に至る過程で、知人である女性の車にGPSを無断で取り付け、行動を監視した事実を認め、犯意の強さとして評価したという報道がありました。
GPSで相手の動静を確認したことがその後の凶悪犯罪にとってなくてはならないプロセスになっていることがあります。
そう考えると、たしかに、検察官が主張したように、このようなGPSによる動静監視を規制する必要性は高そうです。
この点、今の法律の文言で処罰することはできないと判断されたのですから、今後、法改正が進む必要があるものと思います。

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