リーガルエッセイ
公開 2020.07.29 更新 2022.09.13

貸金業法 無登録で貸金業を営んだ疑い

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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貸金業法とは?

先日、SNSで知り合った人に、約63万円を貸し付けて貸金業を営んだとして、貸金業法違反の被疑事実で女性が逮捕されたと報じられました。
報道によると、女性は、今年になってから、4回にわたって計約63万円を振り込んで貸し付けており、これ以外にも複数の人に対し貸し付けを行っていたと見られているとのこと。
事実関係はまだわかりませんが、借りていた人が警察に相談に行ったことがきっかけとなり発覚したと報じられていることや、逮捕された女性が、動機についてお金を稼ぐためという趣旨の供述をしていると報じられていることからすると、高い金利で貸し付けをしていた可能性がありそうですね。

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友達にお金を貸したら賃金業法違反?

「じゃあ、友達から頼まれて無利子で1回お金を貸したことがあるのだけど、それも貸金業法に違反して逮捕されるようなことなの?」と思う方もいるかもしれません。

「友達にお金を貸せばそれだけで貸金業法違反」というわけではありません。
貸金業法は、貸金業を営むためには、登録(営業所等の設置がひとつの都道府県の区域内に収まっているかどうかによって内閣総理大臣または都道府県知事の登録)が必要で、登録をしていない人は、貸金業を営んではいけないと定めています。
貸金業を営むという広告をしたりすることも許されません。
無登録で貸金業を営んだ場合の刑事責任は重く、その法定刑は、10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金(またはその併科)です。
お金の貸し借りについては、ヤミ金被害にあったり、返済能力を超えた無理な借金をして生活を破たんさせてしまったりということが懸念されるため、登録された業者がルールに則して貸し付けを行うことで借りる側を保護するためにこのような規制があるのです。

過去の裁判例で、登録を必要とする貸金業というのは、反復継続の意思をもって、金銭の貸付または金銭の貸借の媒介をする行為をすれば足り、必ずしも報酬または利益を得る意思もしくは現にこれ(報酬又は利益)を得た事実を必要としないものと判断しているものがあります。
つまり、利子を高くつけることでお金を稼いだり、稼ごうという意図で貸し付けたりしていなくても、複数人に対して貸し付けていたり、複数回にわたり貸し付けていたりすれば、たとえ無担保で貸し付けをしていたとしても貸金業にあたる可能性があり、登録なくしてこれを行えば、無登録貸付の禁止に該当し、重い刑事責任を問われる可能性があるのです。
友達に対して、友達を助けようとお金を貸すという行為であっても、友達の人数、貸し付けの回数、貸し付けの内容等によっては、無登録で貸金業を営んだと評価されてしまう可能性があるといえます。

金融庁のホームページでは、「#個人間融資に要注意!」として、SNSで勧誘してお金の貸し借りを行う「個人間融資」について、貸金業法の規定に抵触する場合があると警告しています。
利用しようとする側にも、個人を装ったヤミ金業者が紛れ込んでいる可能性や犯罪被害に遭う危険を指摘して警告しています。
コロナの影響で経済的不安を抱えるかたが多くいると見込まれる中、今後、SNSを利用して無登録で貸金業を営む案件がこれまで以上に積極的に摘発されていくかもしれませんね。

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