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先日、被告人が、保釈中に別の犯罪に及んだとして逮捕されたという報道がありました。
保釈というのは、あくまでも一時的に身柄拘束を解くものです。
身柄拘束を一時的に解かれているとはいえ、まだ、裁判を控えた立場です。
これから裁判所に出頭して裁判を受ける手続きを控えているのに、そういう状況で別の犯行に及んで逮捕されることなんてあるのか?と思われるかもしれません。
でも、保釈中に別の犯罪に及んで逮捕されるというケース、決して少なくないのです。
保釈中に逮捕されたら保釈決定はどうなる?
たとえば、大麻取締法違反の罪で起訴され、その後、保釈決定が出たとします。
その被告人が、第1回目の公判期日を控えていたある日、店で万引きをしてしまい、窃盗の事実で逮捕、勾留されたとします。
そうすると、その被告人は、窃盗の被疑事実で身柄拘束されることになります。
たしかに、大麻取締法違反の罪では保釈決定が出ていますし、その保釈決定は、後に窃盗事件に及んだことで遡って取り消されたりするものではありません。
でも、窃盗の事実で逮捕、勾留されてしまうことで、最初の保釈決定が意味のないものになってしまいます。
窃盗について起訴された後、窃盗の事実についても保釈決定が出れば、被告人は、外に出てくることができますが、窃盗の事実については保釈決定が出ないということになれば、その後も身柄拘束が続いてしまうことになります。
保証金はどうなる?
保釈を許可するという決定が出ても、保証金が納付されないと実際に出てくることはできません。
この保証金については、「〇〇被告人について、保釈保証金〇〇円で保釈が認められました」などと報じられているのを見たことがあると思います。
その金額は、犯罪の性質、情状、被告人の資産状況等からして、「裁判に出頭しないとこの〇〇円をとりあげる、とすれば、被告人はその金額を取り上げられることを避けるため、必ず裁判に出頭するだろう」と見込まれる金額に決まります。
その金額は、200万円くらいになることも多いです。
この保証金、もし保釈決定後に別の犯罪に及んで逮捕された場合は、取り上げられてしまう(「没取といいます」)のではないかと思われるかもしれません。
でも、保証金は、保釈決定後に別の犯罪に及んで逮捕されたという理由だけで、取り上げられてしまい返ってこなくなる、ということはありません。
保証金が取り上げられてしまう可能性があるのは、被告人の保釈が取り消される場合です。
保釈が取り消される可能性がある場合というのは、①被告人が呼び出しを受けたのに正当な理由なく出頭しないとき②被告人が逃亡したり、逃亡を図ろうとしていると疑われるとき③被告人が証拠隠滅を図ったり、証拠隠滅を図ろうとしていると疑われるとき④被告人が、被害者やその近しいかたに危害を加えようとしたり、怖がらせるようなことをしたときです。
そのような事実が認められて、保釈が取り消された場合、裁判所は、保証金の全部または一部を決定で取り上げることができると定められています。
そして、今見てきたように、「保釈中に、別の犯罪を犯さない」ということ自体は、もともとの保釈を取り消す原因とはなりません(もちろん、保釈中の事件の被害者のかたなどを脅す行為に及んで脅迫罪で逮捕された場合は、被害者のかたを怖がらせるようなことをしたとして保釈が取り消されることになるでしょう)。
ですので、保釈中に、別の犯罪に及んだとして、そのことだけで保証金が取り上げられてしまう、ということはないのです。
弁護人として
このように、保釈中に別の犯罪に及び逮捕されたとしても、それだけで納めた保証金が取り上げられるわけではありません。
でも、保釈中に別の犯罪をした、ということは、その新たに及んだ犯罪についても合わせて刑事責任を問われることになるだけでなく、「保釈中であり、裁判を待つ立場でありながら、また別の犯罪に及んだというのは、犯行後も全く反省していなかったのではないか。あまりにも法律を守る意識に欠けているのではないか。司法手続きを軽く見ているのではないか。今後も、再犯に及ぶおそれが大きいのではないか」と評価されかねず、刑事責任がより重いものとなる可能性があります。
弁護人としては、被告人の意向に沿い、保釈決定を獲得すること自体がとても大事な目標になることは間違いありません。
しかし、弁護人の任務はそれにとどまらず、判決を受けた後、依頼人である被告人が、二度と犯罪と関わらずに過ごしていくために今何をすべきかを考えることこそが大事だと考えています。
保釈決定を獲得できたら、依頼人である被告人、周りで見守ってくださる家族、知人のかたと改めて真剣に向き合い、判決を受けた後の環境を調整したり、そのためには保釈中はどう過ごすべきかを話し合ったり、その間頻繁に連絡を取り合い、問題が生じていないか確認したりということも重要な任務だと考えています。
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