リーガルエッセイ
公開 2020.07.02 更新 2021.08.13

マッサージ中に鍼灸師がわいせつな行為「準強制わいせつ罪」とは?

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら

先日、マッサージ中に複数の女性にわいせつな行為をしたとして、鍼灸師の男性が逮捕されたと報じられました。
この件以外にも、同じようにマッサージ中のわいせつ被害が報じられることがあります(多くのマッサージ店が誠実にお仕事をされている中、ごく一部で事件が起き、それが報道されているということはもちろんだと思います)。

それらの報道で、「準強制わいせつ罪」という言葉が出てくるのですが、みなさん、この罪はいったいどういうものなのか、ご存じでしょうか?
強制わいせつ罪というものはイメージがしやすいと思います。
暴行、脅迫を用いてわいせつな行為をすることです(13歳未満の被害者に対しては暴行、脅迫を用いずとも強制わいせつ罪が成立します)。

これとの比較で、「準」という言葉がつくと、なにやら、強制わいせつ罪よりも軽い犯罪なのかな?というイメージを持たれるかたもいるかもしれません。
でも、準強制わいせつ罪の法定刑は、強制わいせつ罪と同じです。
強制わいせつ罪と比べて軽い犯罪などではありません。

では、準強制わいせつ罪は、強制わいせつ罪と何が違うのか?
強制わいせつが暴行や脅迫を手段としてわいせつ行為に及ぶのに対し、準強制わいせつ罪は、相手の、正常な判断能力がない状態や心理的・物理的に抵抗できない状態を利用したり、自ら相手をそのような状態にしてわいせつ行為に及ぶ場合に成立します。
「正常な判断能力がない状態」の例としては、大量に飲酒して酩酊している状態などがあげられるでしょう。
「心理的・物理的に抵抗できない状態」の例としては、たとえば、被疑者と被害者が置かれた社会的な立場などから被害者が心理的に抵抗できないという状態などがあげられます。

今回冒頭で紹介した件が準強制わいせつ罪での逮捕となっているのは、マッサージ店で施術を受けるという状況下、被害者が「これは施術の一環なのか?」という思いから心理的に抵抗が極めて難しいという状態であることを利用してわいせつ行為が行われたといえる可能性があるからです(今後捜査が進んでいく中で明らかになっていくと考えます)。

被害に遭ったら早めに被害申告を

被害に遭われたかたの立場で考えると、とても苦しく、悩まれるだろうなと思います。
というのも、「このことを警察に相談しても、『マッサージだったんじゃないの?』と言われてしまうんじゃないか」「相手も、警察に、『何もしてません。マッサージをしていただけです』と否定するんじゃないか」などと不安になるだろうと思うからです。
お店によりいろいろだとは思うのですが、このような事件が起きるという場合、お店には、ほかに受付のかたなどもおらず、完全に1対1という環境下であることも多く、しかも、リンパマッサージなどは着衣なしで行われることが通常なのでカーテンなどで仕切られ、他から見えない状態になっていることが多いですよね。
そうなると、被害を受けたことを知っているのは自分だけ。
相手がそれを否定したら、結局泣き寝入りになってしまうのでは?それなら、被害申告をしても嫌な思いをするだけなのではないかと思ってしまう方もいるかもしれません。
もっともなお気持ちだと思うし、たしかに、立証のハードルはとても高く、捜査の過程でも詳しい事情を聴かれ、それが負担になることは否定できません。
でも、まさに、そういう被害申告しづらい心理状態を利用しての犯行です。
毎日の仕事、家事、育児のつかれを癒すために、忙しい中、つかの間のリラックスできる時間を持とうとマッサージに行ったのに、そのような被害に遭い、しかも、泣き寝入りしなくてはいけないなんて、それはあまりにもつらいものです。
マッサージのときは、顔をうつぶせにしていたり、顔の上にタオルを載せていたりしていて周囲の様子がうかがえない上に、施術をする相手と自分だけが密室にいるという状況が多く、被害に遭った後も、そのときのことを思い出しておそろしくなったり、ほかのお店にも行けなくなってしまったりということも心配です。
多くのお店が、疲れている人たちの癒しのために誠実に仕事をされているのに、ごく一部の人が卑劣な犯行に及んだために、マッサージに行きづらくなってしまうというのは、あってはいけないことだと思います。

被害に遭ったら、店を出て、すぐに警察に相談してみてください。
それが難しかったら、なるべく早くご家族やお知り合いに被害を打ち明けて、その後、早めに警察に相談してください。
過去の裁判例でも、被害があったかどうかを判断するにあたっては、被害に遭われた直後から被害に遭ったことをほかの方に相談していたか、そのときどのような内容を相談していたか、ということが大事な要素とされることがあります。
また、このような態様での犯行は、一度うまくいくと何度も複数の人に繰り返し行われるという場合も多く、警察に相談に行けば、もしかしたら、同じ店での同じような被害の相談が入っている可能性もあり、これにより立証がしやすくなる場合もあります。
ご不安があって、警察に被害申告するのが怖い、どのように説明していいかわからないなどという場合は、弁護士が被害届の提出に同行したり、一緒に説明に行ったりすることもできます。
お気軽に弁護士までご相談ください。

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