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先日、こんな報道がありました。
成田空港に到着した国際郵便を税関が調べたら、中から覚せい剤が出てきたため、連絡を受けた警察がその覚せい剤を取り出し、代わりに覚せい剤に見える偽物を詰め込み、配達先のアパートに届け、荷物が受け取られたところに警察官が踏み込んだ、とのこと。
そして、報道によれば、そのアパートにはベトナム人10名がいて、所持の現行犯で逮捕されたとのことです。
少し前にも、税関検査で、都内に住む大学生あて小包から覚せい剤の成分を含む錠剤が出てきたため、中身を入れ替えて配達し、受け取られた10分後に警察官が踏み込んだという報道がありました。
この大学生も、所持の現行犯で逮捕されたとのことです。
この話を聞いて、なぜ、中身が入れ替えられたことで、受け取られたときには、それが覚せい剤でなく、偽物になっていたというのに、覚せい剤の偽物を持っていたことが犯罪になって、「所持」で現行犯逮捕されるのかと思いませんか?
麻薬特例法違反
たしかに、今回のように、所持している物が覚せい剤の偽物だったら、覚せい剤を所持しているとして現行犯逮捕することはできません。
当然のことですが、覚せい剤を持っていたわけではないからです。
何とすり替えられるかはいろいろですが、覚せい剤の粉の場合は砂や塩だったり、錠剤の場合はミント錠だったり、つまり、万一泳がせ捜査に失敗してしまったとしても、違法薬物が蔓延してしまうことがないように、違法薬物でないものとすり替えることになります。
客観的に手にしたのは覚せい剤でなく、砂、塩、ミント錠だったのに、覚せい剤取締法違反で逮捕されるというのはおかしいですよね。
今挙げたふたつの件は、どちらも、「薬物犯罪を犯す意思をもって、薬物『その他の物品』を所持」したものとして、麻薬特例法(正式名称はとても長いです)という法律違反の事実で現行犯逮捕されています。
覚せい剤などの違法薬物として取得した「薬物その他の物品」を所持したら、中身について、違法薬物だと認識してさえいればそれだけで麻薬特例法違反になってしまうのです。
その他の物品という中には、砂、塩、ミント錠も含まれます。
法定刑は上限が懲役2年となっていて、本物の覚せい剤を所持したときよりはかなり軽くなっています(もちろん、覚せい剤を日本に持ち込んだ時点で輸入罪は既遂となるので、別に、覚せい剤輸入罪成立の余地があり、結果としては輸入罪で重い刑に処せられることが多いです)。
税関で見つかった違法薬物を、偽物と入れ替えて、それを宛先に届けて受け取らせることで、違法薬物の輸入に関わった人たちを一網打尽にしようとする捜査方法をクリーンコントロールドデリバリーといい、今回とりあげた2つの件はいずれもその捜査手法がとられたものです。
そして、麻薬特例法で、違法薬物の偽物を、違法薬物と認識して所持していたことをも犯罪としているのは、まさに、このクリーンコントロールドデリバリーの捜査手法を前提にしながら、違法薬物に関わる人たちを検挙するということに目的があります。
今回冒頭でとりあげた、10人が逮捕された件では、現時点で、みな、「知らなかった」と供述しているとのこと。
報道からは、「知らなかった」というのが、「そもそも荷物が送られてくること自体知らなかった」ということなのか、「送られてくることは知っていたが、中身が違法薬物だとの認識はなかった」ということなのかわかりません。
今後は、アパートの契約者、その場にいた10人の関係、国際郵便の宛先、その宛先に書いてあった人と10人との関係、それぞれの体内から薬物が検出されたか、その場に集まるに至った経緯に関し携帯電話でのやりとり、郵便を受け取った直後の彼らの行動などを詳細に捜査していく中で、彼らが覚せい剤として所持していたといえるのか、解明していくことになると思います。
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