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「賭博」「賭博開帳図利」逮捕
先日、都内の雑居ビルの一室で、13人の客に賭博をさせたとして違法賭博店を経営する男性と客が逮捕されたというニュースや、愛知県内で、12人の客に賭博をさせたとして違法賭博店を経営する従業員ら11人と客が逮捕されたというニュースが報じられました。
私自身も、検察官だったころ、違法賭博の事件を担当したことがありましたので、そのような事件があること自体は認識していますが、この報道で驚いたのは、警察官の姿でした。
映像や報道によると、警察官は、マスクを着用し、さらに、大きなゴーグルのようなものをかけて店で押収した物を運び出していたようです。
そして、取り調べでは防護服を着用しているという報道も。
異様な光景に映りますよね。
なぜこのような対応がなされたかというと、ちゃんと理由があるのです。
違法賭博が行われる店は、摘発を免れるため、店内の様子が外から容易に確認できないような構造になっていることが多いです。
入口扉も二重扉以上になっていることもあります。
構造上換気などもできない状態なのではないでしょうか?
密室といえる状況です。
そして、警察が店に踏み込んだとき、それぞれ10人以上の客がその場で逮捕されているのです。
密室に客だけで10人です。
客の中には、「コロナでひまだった」などと供述している人もいるとのことです。
緊急事態宣言後も営業されていたというのですから、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために避けるべきといわれている「3密」の要素がそろってしまっていたといえます。
そのような事情があって、店に踏み込む警察官も、その場にいた人を取り調べる警察官も、感染予防の慎重な対応が必要になったのでしょう。
賭博とは?賭博開帳図利とは?
客として賭博した人は賭博罪にあたり、賭博場の運営側は賭博開帳図利(「とばくかいちょうとり」と読みます)罪にあたります。
そもそも、「賭博」とはどんな行為がこれにあたるかご存じですか?
「物を賭けるなら賭博にはあたらないだろう」とか「少額だったら賭博にはあたらないだろう」などというイメージ、ありませんか?
賭博というのは、偶然の勝敗によって金品をもらったり失ったりを争うことをいいます。
そして、条文では、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」は賭博にあたらないとされています。
たとえば、その場ですぐになくなってしまうようなジュースとかお菓子などは「一時の娯楽に供する物」にあたるし、これらをすぐに買う場合の購入代金もこれにあたるといわれています。
でも、その場ですぐにジュースなどを買う場合の購入代金などという場合を除き、現金を賭けた場合は、原則として、少額でも賭博になるとされています。
仲間内でやる麻雀でお金を賭ける場合は、原則として賭博罪にあたり得るのです。
賭博場の運営側については、捜査もなかなか手間がかかります。
1人で運営し、運営による利益を一人で得ているという場合ばかりではなく、複数の人が役割分担をして、立場に応じて利益を受け取っているという場合も多いといえます。
その場合、着手前は内偵捜査をしたり、着手後は運営側の関係者、出入りしていた客たちの取り調べを何度も行う中で、誰がどんな役割に従事していたかが浮かび上がってきます。
店に置いてある帳簿などの精査も必要になりますよね。
背後に反社会勢力の存在があることも多く、その実態解明も重要な目標となってきます。
以下、つぶやき
捜査としては、人員も時間も要する賭博の事件にこの時期に着手したということに、私は、最初、少し驚きました。
もちろん、犯罪である以上、捜査の必要性に優劣などないとは思います。
でも、命や身体に直接の被害を受ける強行犯やわいせつ事犯、ご高齢者などが被害に遭う特殊詐欺事犯などと比べて、リソースが限られている今、すぐに着手しなくても、という見方もあり得るのではないかと思ったからです。
個人的な想像ではありますが、人員も時間も要するこのような事件にあえてこの時期に着手したのは、もしかすると、賭博場が「3密」の状態であり、そこを感染源として新型コロナウイルス感染が拡大する危険があることも踏まえ、放置できない事態だとの判断もあったのかなとも思います。
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