リーガルエッセイ
公開 2020.05.14 更新 2021.08.13

ひき逃げ、死亡事故… 新型コロナウイルス感染拡大は交通事故にも影響か

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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最近、子どもやご高齢のかたが交通事故の犠牲になってお亡くなりになるいたましい事件を報道で何度も目にしました。
被害に遭われたかたは、この自粛生活の中、つかのま、外の空気を吸おうと自宅を出たのだろうなとそのご様子を思い浮かべると、本当に苦しい思いになります。

先日、交通事故の件数が減少しているという記事を目にしましたが、一方で、今まで以上にいたましい死亡事故の報道を目にする機会が増えた気がして、違和感を感じていました。

交通事故の件数自体は減少でも…

先日のニュースで、3月の1か月間に全国で起きた人身事故の件数は昨年より18%減少したにもかかわらず、一部の都県では、昨年の同時期に比べて死亡事故は増えているということが報じられていました。

この事態について、警察は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って外出の自粛が求められる中、車や人の通りが減っていることに原因があるのではないかとみているようです。

つまり、車や人が少なくなったことにより、ドライバーが、スピードを出しすぎたり、他の車や人の存在を想定して注意を払うことを怠ったりしていることが原因となって、重大事故が発生しているのではないかというのです。

本当にそのような影響によるものなのかは、報道だけからはわかりません。
当時、ドライバーにはどのような注意義務違反があったのか、ドライバーはその道をいつも走行しているのか、事故当時のスピード、通常時の車や人通りと事故当時の車や人通りにどの程度違いがあったか、制限速度を超過していたとしたら、事故当時、超過した背景に走行を急ぐ事情があったのかなど詳細な事項を丁寧に捜査していく中で初めて事故の背景事情が浮かび上がってくるのだと思います。

新型コロナウイルスの感染拡大の状況は、これまでにもとりあげてきたように、私たちの社会生活に影響を及ぼしています。
その背景には、未曽有の事態に直面し、これまでと違った行動をとることを選択したり、余儀なくされたりする人がいたり、収束の見えない将来を不安に思ったり、怒りを感じたりする人がいたり、そのような状態で人同士の価値観の違いが顕著になったり、といういろいろな要素が見えるような気がします。

いろいろな考えの、いろいろな行動をしている人がいるということに思いを致さずに自分自身の思い込みにしたがって行動してしまうと、刑事事件に発展したり、今回とりあげたようにいたましい事故を生んでしまったりするように思います。

車を運転するときは、「この時期だから人がいないだろう」などという思い込みは排除して、「この時期で道がすいている傾向にあるからこそスピードをあげて走る車がいるかもしれない」「自分はあまり外出しないけど外出しなくてはいけない人もいるかもしれないから、いつもどおり注意して運転しよう」などと考えることができれば多くの事故を防ぐことができるのだと思います。

警察も、死亡事故増加の事態を深刻に受け止め、注意を呼び掛けているそうです。
1人1人が意識を変えること、これを促進する警察活動で、いたましい事故がなくなりますように。

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