リーガルエッセイ
公開 2020.04.13 更新 2021.07.18

臨時休校に伴う助成制度 活用不十分

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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「小学校休業等対応助成金・支援金」とは?

都道府県により対応は違っていますが、3月初旬から今に至るまで、全国の多くの小学校や保育園等が休校措置をとっています。
そして、緊急事態宣言発令が明らかになったころから、首都圏の多くの小学校等では、現時点で、ゴールデンウィーク明けまでその休校措置を続けるとしています。

このたびの緊急事態宣言発令を受け、在宅勤務を推奨する動きが高まり、これによって、自宅で子どもを見守りながら仕事に従事できるようになったかたも増えたとは思います。
また、学校によっては、一時預かりを受け入れる体制があったり、学童保育で受け入れる体制があったり、このような状況下でも開園する保育園等があったりするようです。

でも、子どもが基礎疾患を有している場合や少し風邪気味であるという場合など、ある程度の集団となることが見込まれる場所に子どもを預けることはなかなかできませんよね。
また、在宅勤務ができない形態のお仕事のかたもいらっしゃることでしょう。
そうなると、まだ、小学生以下の子どもを自宅に置いて出勤するのか、仕事を休むのか、というふたつの選択肢のうちどちらかを選択しなければならない状態にある保護者のかたもいらっしゃると思います。

このような子どもの保護者である労働者について、休職に伴う所得の減少に対応するため、有給休暇を取得させた企業に対する助成金を支給する制度「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」をご存じでしょうか?

対象となる子どもは、①新型コロナウイルス感染症への対応としてガイドライン等に基づき臨時休業等した小学校等(特別支援学校、放課後児童クラブ、幼稚園、保育所等)に通う子どもや、②小学校等を休むことが必要な子ども(休むことが必要というのは、新型コロナウイルスに感染したり、感染のおそれがあったり、医療的ケアが日常的に必要だったり、新型コロナウイルスに感染した場合に重症化するリスクの高い基礎疾患等を持っていたりといういずれかに当たること)となっています。

そして、その子どもの世話を保護者として行うことが必要になった労働者に、賃金全額の支給である有給休暇を取得させた事業主などが支給対象となっています。

これにより、小学校等に行かせられない保護者が賃金全額の支給を受けながら安心して仕事を休んで子どもの世話にあたれるということが想定された制度です。

なお、この制度は、委託を受けて個人で仕事をする人が子どもの世話を行うことが必要となった場合をも対象としていますが、ここでは、保護者が労働者の立場にある場合にしぼってお話しします。

「会社が助成金の制度を使おうとしない」活用不十分な実態

しかし、今、全国の労働局に設置している特別相談窓口に、この制度について、「利用させてもらえない」という相談が複数寄せられているというのです。

会社が利用をしぶる原因としては、いくつか考えられます。
この制度を利用され、多くの人が休みだしたらシフトが回らなくなるというそもそもの人手不足の実態がある場合も考えられます。

また、この制度の助成金には上限があり、日額8330円となっているため、労働者の賃金がこれを上回る場合には、結局その上回る分の負担は事業主が負うことになるという点も原因として挙げられます。

そして、この制度利用の申請をするのが事業主であるために、今挙げたような諸々の事情から事業主が利用に消極的となり、結局、制度の活用が不十分になっている実態がありそうです。

「新型コロナウイルス感染症に関する特別労働相談窓口」に相談を

助成金に上限があり、そこを上回る部分については、事業主側が負担しなければならないこと、これが利用促進のブレーキになっていることは間違いありません。

そこで、この制度自体の見直しを求める声があがっています。
ただ、子どもを持ちながら働く保護者にとっては悠長に制度の見直しを待ち続ける余裕などないというのが実情でしょう。

勤め先の会社が助成金の制度を使おうとしない、無給のまま仕事を休むことを余儀なくされている、などでお困りのかたは、各都道府県の労働局に設けられた「新型コロナウイルス感染症に関する特別労働相談窓口」に相談されることをお勧めします。

厚生労働省のホームページに、各労働局の相談窓口につながる電話番号や開設時間が掲載されていますので、ぜひ見てみてください。

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