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昭和57年に建てられた家屋について、その所有者は、毎年、納税通知書にしたがって固定資産税を納付してきました。
ところが、あるとき、不動産の評価に誤りがあったために、長年、本来払うべき固定資産税より過分に払いすぎていたことが発覚しました。
そこで、不動産の所有者が、自治体に対し、払いすぎた分を返してほしいと裁判を起こしていました。
このたび、その裁判に関し、最高裁がある判断を示しました。
今回は、この裁判で問題になっていた点、これについてどのような判断が下されたか、を説明します。
裁判で問題になっていた点
この裁判で問題になっていたのは、不動産の所有者が払いすぎた分を返せ、という権利が、時間の経過ですでに消滅してしまっているか否かという点です。
自治体の不動産評価に誤りがあって、それによって過分な税金を払わされていたのですから、公務員の過失ある違法行為があったとして、損害を受けた人は、国家賠償請求でその損害を回復することができます。
しかし、その損害賠償請求には、法律により、請求できる期間に制限が設けられています。
それが「除斥期間」です。
除斥期間は、権利を行使しないままに一定の時間が過ぎると権利を行使できなくなるという期間をいいます。
公務員の過失ある違法行為があったことについての損害賠償請求権について、除斥期間は20年です。
「不法行為のとき」から20年で権利が行使できなくなります。
下級審と最高裁の判断に違い
問題は、具体的な事例で、どこを「不法行為のとき」ととらえるか、です。
今回とりあげた事例では、下級審と最高裁とで、この点の判断に違いが出たため、結果として、原告の請求が認められるかどうか、という結論に大きな差が生じました。
下級審では、「不法行為のとき」を、自治体による不動産の評価行為、これに伴う価格決定があったときと判断しました。
そうすると、そこからすでに20年以上が経過してしまっていたため、原告の請求は認められないと判断されてしまったのです。
この点、最高裁は、「不法行為のとき」というのは、それぞれの年度の固定資産税等に関する賦課決定がされて所有者に納税通知書が交付された時点であると判断しました。
そうなると、近い年度の納税通知に関しては、まだ20年を経過しておらず、損害賠償請求が可能ということになるのです。
最高裁は、このような判断をした理由について、最終的に、ある人に損害が確定するのは、ある年度の固定資産税等について賦課決定と納税通知書の交付がされてその税額についてある人に納税義務が発生した時点であることをあげています。
つまり、最初の評価に誤りがあったとしても、その後の課税庁の判断で誤りが修正されれば、そもそも過分な税額が通知されることもないからです。
また、途中で不動産の所有者が変更になれば、損害を受ける人自体も変わってくるからです。
過去の固定資産税課税ミスについてはしばしば報じられるところです。
このたび、除斥期間の起算点について最高裁の判断が初めて示された意義は非常に大きなものといえるでしょう。
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