リーガルエッセイ
公開 2019.07.30 更新 2021.08.13

判決期日延期?!検察側が期日の変更を請求

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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本日、大麻取締法違反被告事件で、田口被告人らの判決が突如延期されるという事態となり、これはなぜなのかということが大きく報道されています(2019年7月30日現在)。

実際にどのような理由があったのか、というところは今後の推移を見守る必要があり、現時点では推測になってしまいますが、きわめて異例であることには間違いありません。
というのも、通常、判決期日は、裁判所が公判期日での証拠調べ等を通じ、この案件は判決期日までにこの程度の日数があれば十分、と判断した日を指定するものだからです。

捜査機関のミスが原因?大麻の鑑定書に何らかの不備?

このたび、判決期日の延期には捜査機関によるミスがあったのではないか、ということが合わせて報道されています。
真偽のほどはわかりませんが、仮にそのような事情があったとすると、一般的には以下のようなことが考えられます。

裁判所は、第1回公判期日に行われた証拠調べ手続きの中で、検察官が証拠の要旨を説明したり、被告人質問で被告人らが供述する内容を聴いており、証拠の内容をある程度は確認しています。
ただし、限られた公判の時間内に、すべての証拠書類について細かい内容にまで目を通せるわけではありません。
裁判官は判決期日に向けてすべての証拠書類に目を通し、そこに書かれた内容を改めて細かくチェックしていきます。
その過程で裁判官が、このままでは起訴状に記載されている公訴事実をそのまま認定することができない、と考えるような問題点を発見した可能性があります。
そして、裁判官が検察官に連絡し、裁判官が発見した問題点を指摘し、その指摘を踏まえ、検察官としては何らかの追加立証を検討するかなどと伝えた可能性はあります。

仮にそのような背景があったとしても、その浮上した問題点が一体何かということは全く分かりません。
一般論で考えますと、起訴状に書かれている公訴事実を立証する証拠が取り調べられていないということが考えられますが、薬物犯罪の証拠構造は比較的シンプルなのでこのような誤りは生じにくいと思います。

ほかには、たとえば、大麻の鑑定書に何らかの不備が認められる、捜索差押調書の記載に照らすと大麻の差押過程に問題があると認められる、といったことが考えられます。

今後の検察の対応は?無罪判決を回避できるのか?

今後、検察官がどのような対応をするか、また、現時点で何らかの対応をすることにより問題を解消でき、無罪判決を回避できるのかについては、その問題の内容、程度にもよるため、何とも言えません。
裁判所は、適当と認めるときは、検察官、被告人もしくは弁護人の請求、または職権で決定をもって、終結した弁論を再開することができます(刑事訴訟法313条1項)。
今回についてもおそらくは、いったん終結した裁判が再開され、そこで検察官から何らかの追加立証がなされることなどが予想されます。
そして、その内容によっては、被告人側においても新たな弁護活動が必要になるかもしれず、その機会も与えられた上で、改めて結審し、判決期日が指定される可能性があります。

いずれにせよ、異例な事態ではありますので、まずは今後の検察の対応が注目されるところです。

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