公然わいせつに該当し得る行為をしてしまった場合、逮捕されるのか、前科はつくのかなど不安に感じることも少なくないと思います。
では、どのような場合に公然わいせつ罪が成立するのでしょうか?
また、公然わいせつ罪で逮捕されると、その後どのような流れになるのでしょうか?
今回は、公然わいせつ罪の成立要件や公然わいせつ罪で逮捕された場合の流れ、逮捕されないためのポイントなどについて弁護士が詳しく解説します。
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公然わいせつとは
公然わいせつ罪とは刑法で規制されている罪であり、公然とわいせつな行為をした場合に該当します。
刑法174条には、「公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する」と規定されています。
公然わいせつに該当し得る典型的な行為としては、路上など不特定または多数の人がいる場において、自分の陰部を露出する行為などが挙げられます。
他の性犯罪とは異なり被害者に直接危害を加えるのではなく、わいせつな行為を公然と行うことによって社会の風紀を乱すことが規制の対象となっています。
刑法上の公然わいせつ罪に該当しない場合であっても、軽犯罪法で拘留または科料の対象となる「公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者」に該当する可能性があります(軽犯罪法1条20号)。
公然わいせつ罪が成立する要件
先ほど紹介したとおり、公然わいせつ罪の条文は非常に短く「公然とわいせつな行為をした者」が公然わいせつ罪に該当するとされているのみです。
これを分解すると、公然わいせつ罪の成立要件は「公然と」と「わいせつな行為」の2つとなります。
それぞれの考え方は次のとおりです。
公然性があること
1つ目の要件は、公然性があることです。
公然性があるとは、一般的に不特定または多数の者が直接に認識できる状態を指します。
たとえば、路上や駅の構内、公園、ショッピングモールなど不特定多数が利用する場がこれに該当します。
不特定または多数の者から認識できる状態でさえあれば公然性を満たすため、ちょうどその通路に通行人が誰もいなかったからといって、公然性が否定されるわけではありません。
また、「不特定」または「多数」であれば公然性があると考えられることから、たとえ特定された人の集まりであっても多数である場合はこの要件を満たします。
つまり、この「公然と」の要件を満たさないのは「特定かつ少数」の場合のみとなります。
わいせつ性があること
2つ目の要件は、わいせつ性があることです。
わいせつ性とは、一般的に「いたずらに性欲を興奮または刺激せしめ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの 」を指します。
ポイントは、わいせつ性は主観で判断されるのではなく、社会一般の感覚によって判断されるということです。
具体的に何を露出したらわいせつ性があると具体的に定義されているわけではないものの、常識的に考えると性器を露出することはわいせつ性があると考えられます。
公然わいせつ罪の刑事罰
公然わいせつ罪に該当した場合は、次のいずれかの罪に処される可能性があります。
- 6か月以下の懲役
- 30万円以下の罰金
- 拘留
- 科料
拘留とは、1日以上30日未満の期間、刑事施設において身柄を拘束し自由を奪う刑罰です。
また、科料とは1,000円以上1万円未満の金銭の納付を命じられる刑罰を指します。
公然わいせつ罪で逮捕されるとどうなる?
公然わいせつ罪で逮捕される際の一般的な流れは次のとおりです。
逮捕される
公然わいせつが発覚すると、必要に応じて逮捕されます。
なお、逮捕がされたからといって、必ずしも有罪判決が下るとは限りません。
逮捕されても不起訴となることも十分に考えられます。
反対に、逮捕されないからといって無罪になるとも限りません。
逮捕されないまま在宅起訴され、有罪となることもあり得ます。
逮捕とは
逮捕とは、被疑者の身体を拘束し、そのまま短時間の身柄拘束をすることです。
誤解している人も少なくありませんが、逮捕は刑罰ではなく懲罰を加えるために行うものではありません。
逮捕の目的は、あくまでも被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐことにあります。
公然わいせつ罪を理由とする逮捕には、主に次の2つのパターンがあります。
- 現行犯逮捕:逮捕令状を受けることなく誰でもできる逮捕。犯人が現に犯行中か、犯行直後のみに行うことができ、犯罪が明白な場合に限って認められる
- 通常逮捕:あらかじめ発付された逮捕状に基づいてなされる逮捕
逮捕の要件
罪を犯したからといって、必ずしも逮捕されるわけではありません。
捜査機関が逮捕をするためには、次の2つの要件をいずれも満たすことが必要です。
- 被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること
- 逃亡や証拠隠滅のおそれがあること
なお、刑事訴訟規則143条の3では、「明らかに逮捕の必要がない場合」として次のように規定されています。
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逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない
送致される
逮捕による身体拘束は最大48時間であり、 その後は、検察官へ身柄が送られます。
これを「送致」や「送検」などといいます。
検察では、24時間以内に被疑者を勾留するか、釈放するかの決定がなされます。
勾留の必要がないと判断されれば釈放されることもありますが、釈放されたからといって無罪となるわけではないことには注意が必要です。
検察で勾留される
必要に応じて、検察が勾留請求を行います。
検察が被疑者を勾留するには、裁判所から許可を受けることが必要です。
勾留期間は原則として10日であるものの、必要に応じてさらに10日間の勾留を伸長することができます。
つまり、逮捕から最大23日間の身体拘束がされる可能性があるということです。
起訴される
勾留期間内に、検察が起訴か不起訴かを決定します。
不起訴となった場合は被疑者の身柄は釈放され、この時点で事件が終結し、事実上罪を問われないことになります。
一方で、起訴がなされた場合は、刑事裁判が開始されます。
起訴がされた時点で弁護士が保釈の申請をしてこれが許可されると、一定の保釈金を納付することで釈放してもらうことが可能です。
刑事裁判が開かれる
起訴されてからおよそ1か月後に、第1回目の刑事裁判(公判)が始まります。
刑事裁判では、被疑者の有罪・無罪や量刑などが決まります。
これにより有罪となれば、前科が付くこととなります。
なお、公然わいせつ事件では事件が公判にまで持ち込まれず、略式命令が下されることも少なくありません。
略式命令とは、100万円以下の罰金または科料に相当する事件について、正式裁判によらず検察官の提出した書面により審査する裁判手続です。※1
略式命令を受けた者は、罰金または科料を納付して手続きを終わらせるか、不服がある場合は14日以内に正式裁判を申し立てることができます。
略式命令の方が手続きが早く完了する一方で、前科が確定することとなります。
正式に裁判を申し立てるかどうかは、弁護士とよく相談したうえで決めるとよいでしょう。
公然わいせつで逮捕される主なリスク
公然わいせつ罪で逮捕がされることには、どのようなリスクがあるのでしょうか?
主なリスクは次のとおりです。
出社ができず職場に知られる
身柄拘束を受けると、その後は弁護士に伝言を依頼したり、留置施設で面会する以外は、外部と連絡を取ることが大きく制限されます。
そのため、長期にわたって出社しないことで何らかの事件に巻き込まれたということが知られる可能性が高いでしょう。
場合によっては無断欠勤などを理由として、懲戒解雇の対象となる可能性もあります。
実名報道がなされる可能性がある
公然わいせつで逮捕されると、実名での報道がなされる可能性があります。
これにより、会社や親族などに逮捕が知られるリスクがあります。
公然わいせつで逮捕されないために
公然わいせつ罪で逮捕されないためには、どうすればよいでしょうか?
主な対応は次のとおりです。
自首をする
1つ目は、自首をすることです。
自首とは、捜査機関が犯罪事実や犯人を特定する前に、自ら罪を申告して処罰を求めることを指します。
先ほど解説したように、逮捕は逃亡や証拠隠滅を図る恐れがあると判断された場合にのみ行われます。
逃亡や証拠隠滅の意図を持った人があえて自首をすることは考えにくいため、自首をすることで逮捕されるリスクを引き下げることが可能になります。
1人で自首をすることに不安がある場合は、弁護士へ相談し自首の際に弁護士へ同行してもらうことも可能です。
弁護士へ相談することで、他の解決法についてアドバイスが受けられる可能性もあります。
弁護士へ相談する
2つ目は、弁護士へ相談することです。
弁護士から逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを捜査機関に説明してもらうことで、逮捕を避けられる可能性が高くなります。
まとめ
公然わいせつ罪とは、公然とわいせつな行為をした場合に該当する罪です。
公然わいせつ罪を犯すと6か月以下の懲役や30万円以下の罰金などの罪に問われる可能性があるほか、逮捕される可能性があります。
逮捕されると最大23日間の身体拘束がなされるため、会社の業務などに支障が出る恐れがあります。
ただし、弁護士へ早期に相談することで、逮捕や起訴を回避できるかもしれません。
そのため、公然わいせつ罪で逮捕されるおそれが生じた場合は、できるだけ早期に性犯罪問題に詳しい弁護士へご相談ください。
Authense法律事務所では、公然わいせつなど性犯罪にまつわるトラブル解決に経験豊富な弁護士が多数在籍しており、これまでも多くの事件をサポートしてきました。
公然わいせつ罪に該当し得る行為をしてしまってお困りの際は、Authense法律事務所までお早めにご相談ください。
参考文献
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