コラム
公開 2023.12.01

痴漢の示談金交渉の流れは?金額相場や目安と弁護士に依頼するメリットを弁護士が解説

痴漢行為は犯罪であり、逮捕されたり前科が付いたりする可能性があります。

痴漢事件で被害者と示談金交渉をまとめることには、どのようなメリットがあるでしょうか?
また、痴漢事件での示談金の目安はどの程度なのでしょうか?

今回は、痴漢事件での示談金交渉について弁護士が詳しく解説します。

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。同志社大学法学部法律学科卒業、東洋大学法科大学院修了。これまで数百件を担当してきた建物明渡請求の分野を主軸に、離婚などの家事事件についても豊富な解決実績を有する。刑事事件も積極的に取り扱っており、訴訟対応も得意としているほか、企業不祥事や従業員による犯罪行為など、企業が関わる刑事事件への対応にも強い意欲を持つ。
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示談金とは

示談金とは、痴漢など犯罪の加害者が、裁判外で被害者に対して支払う金銭です。
痴漢の加害者が被害者に謝罪をして示談金の支払いを申し入れ、被害者がこれを受け入れることで示談が成立します。

示談が成立したら、合意した金額の示談金を支払うとともに、示談金の金額や、加害者の刑事処分を求めない旨を記載した示談書を取り交わすことが一般的です。

痴漢で示談金の支払いが重要である3つの理由

示談金の支払いはあくまでも民事の世界の話であり、本来は示談金の支払いと刑事事件(逮捕や前科)の話は無関係であるはずです。
しかし、実際には示談金の支払いが刑事の世界にも影響することが少なくありません。
痴漢をしてしまった際に、刑事の世界でも示談金交渉が重要となる主な理由は次のとおりです。

不起訴となる可能性が高くなるから

被害者と示談が成立している場合、刑事事件で不起訴となる可能性が高くなります。
不起訴とは、検察がその被疑者を刑事裁判にかけないことを決定することです。

不起訴となった場合は、その痴漢事件で有罪となることはなくなり、前科もつきません。
起訴された場合、日本では99%以上の確率で有罪になるといわれています。
そのため、被疑者としてはまずこの不起訴を目指すこととなります。

勾留期間が短くなる可能性があるから

痴漢をして逮捕されたからといって、すぐに起訴か不起訴かが決まるわけではありません。

逮捕されると、まず最大48時間の身体拘束がなされます。
その後は検察に送致され24時間以内に勾留請求されるかが決まり、勾留が決まるとそこから10日間身体拘束がなされます。
また、勾留は最大10日間伸長される可能性があります。

つまり、痴漢事件で逮捕がされると、そこから最大23日間留置所や拘置所に身柄が留め置かれることとなります。
また、逮捕・勾留後に起訴されてしまうと、23日経過後も留置所あるいは拘置所に身柄が止め置かれることがあります。
この間は弁護士以外との外部との連絡は制限され、勤務先に出社することもできません。
そのため、勾留期間が長くなればなるほど釈放後の社会生活に支障が出る可能性が高くなります。

一方、被害者との示談がまとまると、早期に釈放される可能性が高まります。
なぜなら、示談交渉がまとまれば、その時点で検察官が被疑者の身柄を拘束する必要性が低くなりますし、また、被疑者の不起訴が決まった場合は、検察がそれ以上被疑者の身柄を拘束する必要がなくなるためです。

刑事処分が軽くなる可能性があるから

痴漢は、不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪)や都道府県の迷惑防止条例違反に該当する可能性が高いといえます。
それぞれの法定刑は次のとおりです。

  • 不同意わいせつ罪:6か月以上10年以下の拘禁刑
  • 迷惑防止条例違反:6か月以下の懲役または50万円以下の罰金(東京都の場合)

この法定刑の範囲内で、具体的な刑罰は裁判官が決定します。
たとえ起訴されたとしても、被害者との示談が成立している場合は執行猶予が付いたり罰金刑で済んだりなど刑が軽くなる可能性が高くなります。

なお、執行猶予とは刑の執行が一定期間猶予され、一定の執行猶予取消し事由が生じることなく、その期間が経過することで刑の言渡しの効力がなくなる制度です。
執行猶予がつくと刑務所に収監されることなく、日常生活を送ることが可能となります。

痴漢事件での示談金の相場・目安

痴漢事件における示談金の目安は、おおむね次のとおりです。

  • 不同意わいせつ罪の場合:30万円~100万円程度
  • 迷惑防止条例違反の場合:10万円~50万円程度

不同意わいせつ罪と迷惑防止条例違反との間に明確な区別があるわけではなく、そのケースごとに個別に判断されます。
一般的には、服の上から身体を触る行為については迷惑防止条例違反に、身体を直接触る行為については不同意わいせつ罪に該当する可能性が高いといえます。

不同意わいせつ罪の方が法定刑が高いぶん、示談金も高くなりやすい傾向にあります。
また、迷惑防止条例違反では法定刑の上限が50万円以下の罰金であることから、示談金もこの50万円が1つの目安となります。

痴漢で示談金交渉する方法・流れ

痴漢事件で被害者と示談金交渉をする場合、どのような流れで進行するのでしょうか?
示談金交渉の一般的な流れや方法は次のとおりです。

弁護士へ依頼する

痴漢事件で被害者と示談金交渉をしたい場合は、弁護士への依頼が必須だといえます。
なぜなら、示談交渉を行うには被害者の連絡先を入手する必要があるところ、被害者の連絡を入手する手段がありません。もともと被害者の連絡先を知っているような場合を除けば、被害者の連絡先を知ることができないのです。
まずは性犯罪問題に詳しい弁護士に連絡をとり、依頼することから始めてください。

弁護士から捜査機関に連絡をとり被害者の連絡先の情報を得る

弁護士へ依頼したら、弁護士から捜査機関へ連絡をとり、示談をするために被害者と連絡が取りたい旨を伝えます。
その後、捜査機関から被害者に対して加害者側の弁護士に連絡先を教えてよいかどうかの確認がなされ、被害者の承諾が得られれば弁護士宛に被害者の連絡先情報が開示されます。

痴漢事件の場合、情報の開示がされるとしても、加害者本人には連絡先を教えない条件付きであることが一般的です。

弁護士から被害者に連絡をとって示談交渉をする

被害者の連絡先がわかったら、弁護士から被害者に連絡をとります。
弁護士に依頼をしている場合、弁護士が代理して示談交渉を行うことが一般的です。

なお、示談交渉にあたって加害者が同席することは被害者から拒絶されることが多く、またそもそも本人が逮捕・勾留されている場合は物理的に本人が立ち会うことはできません。
そのため、加害者が謝罪文などを作成し、弁護士が持参することもあります。

示談がまとまったら示談金を支払い示談書を作成する

被害者と示談がまとまったら、示談金の支払いと、示談書の取り交わしを行います。
弁護士に示談金交渉を依頼する場合、弁護士が示談書の作成もしてくれるため、安心して任せることができます。

示談書には、次のことなどを記載することが一般的です。

  • 痴漢事件の概要
  • 加害者が謝罪の意を示している旨
  • 合意した示談金の額
  • 被害者が示談金を受け取った旨
  • 被害者が告訴や被害届を取り下げる旨や加害者の刑事処分を求めない旨
  • 他に債権債務がないことの確認文

電車内の痴漢である場合などには、加害者が通勤ルートを変えることなどを盛り込む場合もあります。
示談書には被害者の住所や氏名を記載するものの、原本は弁護士が保管し、加害者には被害者の個人情報をマスキングした写しを交付することが一般的です。

痴漢の示談金交渉を弁護士へ任せる主なメリット

痴漢の示談金交渉を弁護士へ任せることにはメリットが少なくありません。
主なメリットは次のとおりです。

示談交渉に応じてもらいやすくなる

最大のメリットは、弁護士を介することで示談交渉に応じてもらいやすくなることです。

そもそも、痴漢の加害者は、被害者の連絡先を知らないことが一般的です。
また、痴漢という犯罪の性質上、被害者は加害者に連絡先を知られたくないと考える場合が多く、たとえ示談金交渉が目的であったとしても加害者本人へは連絡先を教えてもらえないことが多いといえます。

そのため、弁護士へ依頼しない場合は、被害者の連絡先がわからず示談交渉の土俵に上がることさえできません。
一方、弁護士へ依頼する場合は、加害者本人に教えないことを条件に連絡先の開示を受けることができるので、示談交渉を始められる可能性が高くなります。

適正な示談金で示談交渉がまとまる可能性が高い

2つ目は、適正な示談金で示談交渉がまとまる可能性が高いことです。

痴漢事件の示談金の目安は、先ほど解説したとおりです。
しかし、痴漢の被害者は大きな恐怖を味わっていることが多く、一般的な金額では安すぎると考えるかもしれません。
そのため、非常に高額な示談金を要求されるケースがあります。

自分で示談交渉をする場合は、前科がつくのを避けたいとの思いから、高額な示談金請求を飲んでしまう可能性もあるでしょう。
もちろん、加害者が引き起こした事件である以上は被害者に対して誠意を見せる必要があるものの、法外な示談金を支払う必要まではありません。

弁護士が代理で交渉をする場合は、適正な示談金で交渉がまとまりやすくなります。
被害者が法外な示談金を請求して譲らない場合は交渉が決裂する可能性もあるものの、示談の経過に関する報告書を丁寧に作成し、適正額であれば支払う意思があることを示すことで、刑事処分の決定において有利となる効果が期待できます。

このように、性犯罪事件に詳しい弁護士へサポートを依頼することで、臨機応変な対応をとることが可能となります。

刑事を踏まえた全体の流れが理解しやすくなる

刑事事件の被疑者になった場合、その後どのような流れとなるのかがわからず不安に感じることも多いと思います。
痴漢事件で逮捕された場合は、スマートフォンなどを使うことができなくなり、弁護士以外とは連絡がとれなくなるため、不安は大きいことでしょう。

弁護士へ依頼することで全体の流れを把握しやすくなるほか、今行うべきことについても明確となります。

被害者から度重なる示談金の請求を受ける事態を避けられる

痴漢事件を引き起こしてその場で被害者と直接示談をまとめた場合は、被害者から度重なる示談金の請求を受けるリスクがあります。
たとえば、痴漢事件を起こした直後にいったん示談金交渉が成立してまとまった金銭を支払ったにもかかわらず、後日追加での支払いを請求されることなどが考えられます。

このような事態を避けるため、示談金交渉がまとまったら示談金の支払いと引き換えに、これ以上の債権債務がない旨の清算条項を盛り込んだ示談書に署名してもらうなどの対策が必要です。
弁護士に依頼する場合は、このような対策を抜かりなく行うため、何度も示談金を請求されたり何度も交渉を蒸し返されたりするリスクを避けることが可能となります。

まとめ

痴漢事件を起こしてしまったら、まずは示談金交渉をまとめることを目指しましょう。
被害者と示談をまとめることで、不起訴となる可能性や早期に釈放される可能性、刑が軽くなる可能性が高くなります。

痴漢事件での示談金の目安は、不同意わいせつ罪の場合で30万円から100万円程度、迷惑防止条例違反の場合で10万円から50万円程度です。
目安となる金額を把握したうえで、誠意をもって示談交渉に臨んでください。

ただし、痴漢事件の示談金交渉を自分でまとめることは容易ではありません。
その場で焦って示談をまとめた場合は、後から追加で示談金を請求されるリスクがあるほか、後日示談交渉をまとめようにも加害者本人には連絡先が教えてもらえず示談交渉を始められない可能性もあるためです。

そのため、万が一痴漢事件を起こしてしまったらできるだけ早期に弁護士へ連絡し、弁護士経由で示談金交渉を進めるようにしてください。

Authense法律事務所には痴漢など性犯罪事件に詳しい弁護士が多数在籍しており、これまでも多くの案件で示談をまとめてきました。
痴漢事件を起こしてしまってお困りの際は、Authense法律事務所までご連絡ください。
弁護士が総力を挙げて解決へ向けたサポートを致します。

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