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学校内に参院選啓発ポスターを掲示することの是非
先日、ちょっと驚くようなニュースを目にしました。
参院選を控えた先月末ころ、ある高校で、生徒が、自主的に、校内の掲示板にポスターを貼ったというのです。
そして、そのポスターには、参院選を控え、選挙の基本的な仕組みや期日前投票の手順などを記載したというのです。
高校時代、勉強と恋愛のことしか頭になかった私は、そんなポスターを貼ろうと企画し、手作りしてしまう生徒の自主性に感服し、なんてすばらしいのだろうと思いながら記事を読み進めたところ、実は、そのポスターについて、生徒指導部長である教員からはがすように指示があったと報じられているのを見て驚きました。
結果として、後日、教員が、内容の確認不十分なままにポスターをはがす指示をしてしまった点、謝罪の上、掲示の許可をしたとのこと。
そもそも、教員は、当初、何を根拠にポスターをはがすよう指示したかというと、その学校の校則だったと報じられています。
その学校の校則には、「校内での政治的活動を禁じる」というものがあるため、それに基づく指示だったとのことです。
そうなると、まずは、この校則で禁じられているという政治的活動というのは、具体的にどのような内容を指すのか、ということを明らかにする必要がありそうです。
特定の選挙で、特定の政党や候補者に対する投票を呼び掛けるようなことを指すのか、それとも、もっと広く、おおよそ、一般的に選挙に関してあらゆるメッセージを伝えることを指すのか。
内容を明確にした上で、そのような校則で加える制限が、果たして許されるものなのかどうかという検討が必要ですよね。
校則というのは、特定のヘアスタイルを禁止するものとの関係で話題になることがありますが、過去の裁判例に照らしても、どのような校則を定めるかについては、教育目的との関係で、必要で合理的なものであるという点の評価に、学校にかなり広い裁量が認められているように感じます。
もし、ある学校の校則が、おおよそ、一般的な選挙というものについてあらゆるメッセージを伝えることをも禁止するというようなものであるとすれば、それは、さすがに、教育目的との関係で必要で合理的なものであるとは評価できないと思います。
投票できる年齢が18歳以上となったこととの関係でも、むしろ、投票の意味、選挙にまつわる各種ルールなどについて積極的に学ぶ機会を作ることが求められているともいえるでしょう。
今回報じられた件で、生徒が、参院選を控え、選挙について生徒たちに学ぶ機会を提供するポスターを掲示したのだとすれば、そのような行為を、校則に基づき禁ずることはできないはず。
ですから、結果として、掲示が許可されたというのは当然あるべき対応だったのだと思います。
ただ、今回は、生徒が、教員の対応について、「おかしいのではないか」と声をあげたことがそのような結果につながったように感じますが、もしかすると、教員からポスターをはがすような指示があった時点で、「ルールならやむを得ない」と考えてしまうケースもあるかもしれません。
報じられた学校に限らず、このような報道をきっかけに、学校側において、生徒たちの政治的活動について学校はどう受け止めるべきなのかということを考え、その在り方に沿う校則となっているかの検証も必要だと思います。
文科省では、「高等学校等における政治的教養と高等学校等の正当による政治的活動等について(通知)」とともに、それに関するQ&Aをホームページで公開しています。
そこでは、生徒たちの政治的活動等に学校側がどう向き合っていくかについて指針となるような内容が記載されています。
ただ、この内容をよく読むと、まだまだ、考えるべきことがあるように感じます。
ここに書かれたことを必ずしも「正解」として受け止めるべきではなく、果たして学校側の対応は、生徒の表現の自由や思想良心の自由を不当に制限することにならないかということを考える必要があると思うし、その過程で、生徒の考えに耳を傾けることもそれ自体が重要な教育機会になるのではないかとも思います。
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