リーガルエッセイ
公開 2022.06.27

ストーカー規制法について

ストーカー規制法について
記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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改正ストーカー規制法で逮捕

先日、GPS機器を女性の荷物にしのばせ、70回あまりにわたり位置情報を取得したとして、男性がストーカー規制法違反の疑いで逮捕されたと報じられました。
このニュース、昨年、ストーカー規制法が改正されたこととも合わせて報じられているようです。

昨年のストーカー規制法改正によって新たに規制されることになった行為とは何か?
今回の報道と関係する部分は2つ。

1つ目が、他人の承諾なく、GPS機器等の位置情報を取得する行為。
2つ目が、他人の承諾なく、他人の所持する物にGPS機器等を取り付ける行為。

たとえば、他人に車にひそかにGPSを取り付けることや取り付けたGPSから位置情報をひそかに取得することなどがこれに当たります。

私は、GPSの仕組みをしっかりと理解できているわけではないのですが、もし、位置情報を実際に取得する前であったりし、その取得の記録が残っていないとしたら、GPSの取り付け行為だけである人の刑事責任を問うことはなかなか立証が難しいように感じます。取り付け行為が、カメラなどに録画されているならともかく、取り付けをする動機だけで犯人であるとの立証はできませんから、GPSと犯人とを結びつけるための他の証拠が必要になるでしょう。そのGPSの購入履歴があること、取り付けの機会があり得たこと、ほかの人の介在が考え難いこと、GPSや取り付け場所周辺に被疑者の指紋が残っていたこと等の事実を丁寧に積み重ねていくことになるように思います。

私は、このニュースを見て、ほかにも気になったことがあります。

それは、離婚紛争においてもこのストーカー規制法の改正を意識する必要があるのではないかということです。

相手に浮気の疑いがあるものの、決定的な証拠をとれていないという場合に、パートナーの持ち物にGPSを取り付けようと思うなどという話を聞くことがあります。

このような行為は、GPSを承諾なく取り付ける行為として、仮にその時点で反復していなかったとしても、警告や禁止命令の対象になり得ます。
取り付けの態様によっては、住居侵入等他の犯罪に該当するリスクもあります。

それによって、犯罪が成立して、刑事責任を問われるか否かということ以上に、そのようなリスクを自ら作ることは、離婚に関する話し合いにおいて、弱みを作ることにほかならず、劣勢に立たされる可能性もないとはえません。

パートナーの浮気が疑われるが決定的な証拠がないときにどう対応するか?
このような点は、できるだけ早く、弁護士にご相談頂き、ゴールまでの戦略を立てることが重要です。

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