リーガルエッセイ
公開 2022.05.30

子どもへの「法教育」何をどう伝えたらよいのか?

子どもへの「法教育」何をどう伝えたらよいのか?
記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら

我が家の法教育

ちょっと宣伝になってしまうのですが、先月、私が弁護士として監修を務めた「生きるために必要な法律のはなし」という本が発売になりました。
主に中高生くらいの子どもたちに知っておいてほしいことがとても丁寧に書かれていると思っています。

この話を周囲にしたところ、たくさんのママさんたちからご連絡を頂きました。
その中で一番多く頂いたお声が「ちょうど、子どもに法律についていろいろ勉強してほしいと思いながら何をしたらいいかわからなかったからちょうどよかった」というもの。
本を読んでいただけることをとてもうれしく思います。
と同時に、「何をしたらいいかわからずにいた」というお声がとても多かったことは驚きの発見でした。

いろいろな方法があると思うのです。
でも、私が一番簡単かつ効果的だなと思うのは、日々のニュースで話題になっていることなどをちょっとだけ日常会話に取り込むことを意識すること。
あまり大げさに「教育」などと考えず、まずは、社会で起きている出来事やそこに絡む法律を少しだけ身近なものにすることからスタートしてみるのもいいのではないかと思うのです。

少し前になりますが、子どもが、毎日の授業で疲れ果ててしまい、なかなか部活動に行けないでいた時期がありました。
そんな中、学校で顧問の先生と会った際の話を子どもがしてくれました。

  • 「明日、部活行くかも。だから遅くなるかもしれない」
  • 「お、ついに行くのね。なんかあった?」
  • 「顧問の先生に会ったら、『あしたは部活に来なさい』って言ってきたからさ」
  • 「なるほど、それで行く気になったわけ?」
  • 「私ね、先生に聞いたの。『それって強制ですか?任意ですか?』って。ほら、ママいつも言ってるじゃん。警察から、警察署に来なさいって言われたら、『強制ですか?任意ですか?』って聞いて、任意だって言われたら行かなくていいんだって。だから同じように聞いてみたわけ。」
  • 「(いつも、ニュースを見ながらそんな熱弁振るっていたことを激しく後悔)」
  • 「で、先生が『強制です』っていうの。だから、『わかりました。じゃあ行きます』って言ったの」
  • 「なるほどね。そういうわけね」
  • 「でもね。わたし、『強制』であるわけないってわかってるわけ。だってさ、先生が生徒を無理やり部活に行かせる権利なんて絶対ないじゃん。警察でもあるまいし。令状もないしね。だから、『任意』なんだろうってわかってんの」
  • 「え、、、じゃあ、なんで『行きます』ってなるわけ?任意だってわかっていたなら、行きませんって言えばよかったじゃない?」
  • 「強制ってことはないなってわかっていたけど、まあこれもいいきっかけかと思ってさ。部活、そろそろ行かなきゃって思ってたしね。強制って言われたのをきっかけに、じゃあ行きますでいいかって思ったわけ」

なんでもかんでも日常に落とし込めばいいとは思いません。
そもそも、強制捜査と任意捜査の話を、先生から「~しなさい」と言われた際に持ち出すようなことじゃないってことは火を見るよりも明らかなのです。
だから、私は、全く、自分自身が親としてなすべき法教育について成功を収めているわけではありません。
でも、法律に関わる話を、遠い世界の話ではなくて、自分事に置き換えるとどうなるのかなと考える視点を持たせることについては、なかなかいい線いっているのではないかと思っているのです。
まずは、ここからがスタートかなと思っています。

たとえば、まずは子どもにとって身近なSNSに関わる話題などはいいかもしれませんよね。
先日も、ある男性が強制性交未遂の被疑事実で逮捕されたと報じられましたが、その男性は、女性のSNS投稿から住所を特定したのではないかとみられているとも報じられているのです。
事実か否かはまだわかりません。
でも、このようなニュースを見たときに、子どもにその内容を説明し、投稿から住所が特定されるってどういうことなのか、一緒にいろいろな人のSNSを見て、どういうところから個人につながる情報が特定され得るのか、そして、特定されることが具体的にどのような被害のリスクをはらんでいるのか、そんな話をするきっかけにすることは、子どもたちが、社会で起きていることを自分事として感じるためにもとても大事なことではないかなと思うのです。

学校の授業や法教育の本などで勉強することもとても大事なことだと思います。
でも、社会で起きていることを、一般論でなく、その子にとって身近なものにするための工夫は日常会話でこそ行われることが大切なのではないかなと私は思っています。

成年年齢の引き下げに伴い、その必要性はより高まっています。
ちょっと難しそうなニュースや法律の話題を子どもたちにとって楽しく、わかりやすくお伝えする法教育の授業。
ご興味のある学校のご担当者の皆さま、ぜひお問い合わせください。

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