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INNOVATORS
公開 2024.05.29 更新 2024.05.31

「識学」関連著書でベストセラー連発!
数値化・仕組み化の徹底で企業はどう変わるのか?(後編)

企業へのマネジメントコンサルティングを手掛けている株式会社識学(東京都品川区)。代表の安藤広大氏が著した著書「リーダーの仮面」「数値化の鬼」「とにかく仕組み化」(いずれもダイヤモンド社)のシリーズ三部作は130万部を超えるベストセラーとなりました。
前号掲載の前編では「識学」の基本思想について伺いましたが、後編では「識学」導入時の考え方や変化の有り様についてお届けします。

改めて考える「経営理念」の重要性

組織をどう変革していくかについてお伺いします。
経営者が自分の会社をよりよく変えていきたいと考えたとき、まず考えるべきことはなんでしょうか?

安藤広大氏(以下、安藤氏) : 正しいルールに則って運営することですね。定めたルールが正しいかどうかは実行してみなければ分かりません。だからルールに力を持たせるというか、仮説を立てて検証して作ったルールをまずはやってみる。やってみて間違っていると分かったら変えていけばいいんです。決まっている以上はルールに全員が従って動くというのは大切なことではないかと思います。

そしてルールに則って動く状況を社内でいかに作れるか。社内においてルールはいわば「法律」ですからね。その法律にしっかり力を持たせることができるかというのは重要なポイントかと思います。じゃないと社内の統制が取れませんから。

社内でルールが一番上にある状態を作るということですね。ルールを作るにあたって逆算すると、必然的に経営理念に行き着くのではないかと思います。
一部の企業ではホームページを作る際に急いで慌ててこしらえたような理念もあるのではないかと思います。
経営者自身に思い当たる節がある場合、どこから着手するべきでしょうか。

安藤氏 : そういった会社もありますよね。理想は経営理念があって、その経営理念の達成のために目標設定があり、その目標設定を達成するためのルールがあるというありかたです。
ただ、一時的な部分にフォーカスしてお話しすると、仮に経営理念がなくても、または企業の実態に則していない理念が定められていても、ある程度の目標設定ができていればその後のフェーズを分解してルールを作ることができます。

ただ、自社を取り巻く環境の変化とともに企業が変化していくとき、もしくは変化しなければならないときに、筋の通った企業理念がないと一貫性を持って変化させることができません。たとえば、その場その場で儲かる話に食いついてしまうといったことが起こりかねないんですね。
また、しっかりとした経営理念がないとトップが意思決定する際のPDCAも回せなくなってしまうという点も弱点として挙げられるかと思います。

とはいえ、絶対に無ければ会社は成長しないのかというとそういうわけではない。ただ、連続性を維持した成長を目指すとなると少し難しいのではないかと考えています。

経営理念がないと企業に「柱」が通りませんね。

安藤氏 : おっしゃるとおりです。企業経営に失敗はつきものですが、その失敗を次に活かしにくくなるんですね。
トップとしても次の意思決定に踏み切る際に頼るものがなくなってしまうんです。

相互認識の誤解・錯覚

変革を拒否する社員への対処法

前編では、識学を企業に導入する際、まずは経営者に正しく識学の教えを理解してもらうところから始めるとおっしゃっていました。
経営者が自社を変革しようと決意して取り組んでも、社内には必ず抵抗勢力が発生するかと思います。
企業をよりよく変えていきたい、社員に変革を促したい—と思ったらまずはどのようなところからアプローチをするのが良いのでしょうか?

安藤氏 :識学をお客様の企業に導入しようするとき、はじめのルールを我々は「姿勢のルール」と定めています。この姿勢のルールにできる・できないは存在しないんですね。

たとえば挨拶をする、掃除する、具体的には何でも良いですし、挨拶や掃除を必ず「姿勢のルール」に入れるわけではないのですが、要はできる・できないといった言い訳ができないルールを定めるんですね。組織として決めたルールを絶対に、社員全員が守るという状態を作るところからスタートします。

これがもうできてない状態は、いわば法律違反が許されている状態なので、いくら「変わろう」と言ってもなにひとつうまく行かないんですね。なので、まずは簡単なルールを定めて社員全員が守る状態を作ります。ここができていない組織は、このあと何をやっても無駄です。

そういった入口のルールを定めた段階で指示に従わない、いわば社内の法律に従おうとしない社員が出てきた場合にはどのように対処されるのですか?

安藤氏 :そういった方は会社にいてはいけない人ですね。要は能力が低い人や成長段階にある人は会社側がちゃんと育てるという責任がありますので見捨ててはいけないと思います。もちろん営利集団ですので、全員が全員の成長を待っていられないという側面はありますけれども。
でも、姿勢のルールを守れない、破る人まで救う必要はありませんよね。自分の意志で自社のルールを破っているわけですから、それは組織に対するある種の反逆と考えられます。

はじめに誰にでも守れる簡単なルールを定めて社内に伝達することで、そういった自社内の反乱分子があぶり出されるというわけですね?

安藤氏 :そういうことです。そこで、ルールを守れる社員だけが残る。組織の変革はここから始まります。

これまでに手掛けられてきた企業が識学を導入して成果が出るまで、どれくらいの期間がかかるものなのですか?

安藤氏 :規模や企業内の状況にもよりますが、芯まで変わるのにはだいたい1年ほどでしょうか。数字自体は早い企業では3ヵ月、多くの企業が半年で成果を実感されるケースが一般的です。

数値化を徹底した評価制度

安藤 広大 氏

著書の「数値化の鬼」では「自ら心を鬼にして正しく自分の数字を見極めなければならない」という一節があります。
目標の3分の2を達成できたからよしは許されない。とはいえ自分で自分を律するのは大変つらいものです。
企業やマネージャー層はどのように社員を導いていけばよいのでしょうか?

安藤氏 :会社側はそういう状況が許されない環境をいかに作るかです。たとえば成果を挙げなければ給料が上がらない仕組みや、競争環境を作って比較される状況を作るといったことですね。
一見、かわいそうに見えるかもしれませんが、社員が「負けている」ときにちゃんと恐怖を与えてあげることによって、人は成長して将来の糧につながっていきます。
負けている状況を許すほうがよっぽど悪だというのが我々の考え方です。

評価制度の重要性に関するお話しもありました。営業などは数値化しやすいのですが、総務などは数値化が難しい面があります。
バックオフィスの評価制度についてはどのようにお考えですか?

安藤氏 :タスクをポイント化してポイントをいかに稼げるかという制度設計をしています。ポイントを稼ごうと思ったらバックオフィスの場合9割以上がルーティンワークですので、ルーティンワークを早く終わらせて提案業務を行うという形でなければ稼げません。そうすることで生産性を高めていく仕組みづくりを行っています。

また、どんな仕事にも期限が存在します。ルーティンワークを正確に早く行うことによって生産性を上げることができるので、その点も評価制度の中に入れていくようにしています。

識学を導入する際、社内で起こるトラブルや典型的な変化のようなものはありますか?

安藤氏 :これまで3000社以上に導入していただいているのですが、反乱者が出てきて辞めてしまうというのは「あるある」です。優秀な営業マンだけれどもルールを守れないという社員が辞めてしまうこともあります。
一見、大きな数字が失われることで会社にダメージが有るように見えますが、そういった社員によって社内のルールが歪んでいるので、他の社員への悪影響も大きいものなんです。そういった社員は辞めてもらったほうが、結果的に大反転が起こり売上が底上げされます。
だいたい3ヵ月ほどで見えてくるのが通例です。

最後に経営者の皆さまにメッセージをお願いします。

安藤氏 :我々が大事にしていることのひとつに時間の概念があります。いまこの瞬間、部下や会社のためになることをやるのか、あるいは未来の部下や会社のために大事なことを手掛けるのか。その時間軸によってやれることはまったく変わってくると思います。

我々は未来の時間軸で部下や組織が成長し、彼らが稼げる量を増やすにはどうすればよいのかという部分を考えて経営したり、組織を作る経営者が増えればいいなと思ってサービスを提供しています。

ありがとうございました。

<前編はこちら>

Profile

安藤 広大 氏

1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモを経て、ジェイコムホールディングス(現:ライク)のジェイコムで取締役営業副本部長等を歴任。
2013年に「識学」に出会い独立。2015年株式会社識学を設立。2019年に上場を果たす。「リーダーの仮面」「数値化の鬼」「とにかく仕組み化」などの著書がある。

著書紹介

  • 「とにかく仕組み化─ 人の上に立ち続けるための思考法」
  • 「とにかく仕組み化─ 人の上に立ち続けるための思考法」
    ダイヤモンド社刊
    「リーダーの仮面」「数値化の鬼」に続く、シリーズ三部作の最新作。刊行と同時に話題を集め、発売から半年で26万部を突破するベストセラーに。
    2023年12月現在もAmazon等のランキングで1位を獲得中。仕組み化することでルールによって問題解決を図り、自身もチームも企業も成長させるための考え方を凝縮した一冊。