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INNOVATORS
公開 2023.10.26

入念な準備と地道な生活の積み重ねが生み出した「信頼」と「実績」
俳優・司会者 谷原章介氏 インタビュー(前編)

谷原 章介 氏インタビュー前編

男性ファッション誌のモデルとしてキャリアをスタートさせたタレントは数多い。そのなかで俳優、タレント、司会者として幅広く活動できる人材は一握りだ。谷原章介氏はそのルックスとスタイルで男性モデルとして芸能界デビュー。以後、自身の強みを活かして挑戦を繰り返し、新たな領域を開拓し続けてきた。谷原氏が一歩ずつ着実に成長を続けてこられた理由はどこにあるのか、チャレンジ精神の根幹にはなにがあるのか話を聞いた。

取材・文/山口和史 Kazushi Yamaguchi 写真/斎藤大嗣 Daishi Saito

予想だにしていなかった国民祭典司会のオファー

- 2019年11月9日、皇居前広場で「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」が行われた。13時から開催されたこのイベントには、延べ7万人の参加者が集まったと言われている。

谷原 章介氏(以下 谷原氏): 錚々たる方々がお見えになる会でした。そういった会の進行を滞りなく、そして盛り上げて参加者やテレビの視聴者の皆さんが気持ち良くこの会を楽しめるように進行できる喜び、これは身に余る光栄でした。

- 国内外の国賓を招いて開かれるイベントでミスは許されない。司会進行の技術だけではない。プライベートでのスキャンダルもあってはならない。ルックス、技術、人柄、生活態度、全方位からのチェックが主催者側で行われたことは想像に難くない。

谷原氏 : 遠く離れたところですけれども、天皇陛下と皇后陛下のご尊顔を拝することができて、さらに僕の『これより天皇陛下が御退席されます』といった言葉をきっかけに、しずしずとお立ち去りになる。こんな機会はなかなかないですよね。

- この一大イベントの司会を元NHKのフリーアナウンサー有働由美子氏とともに務めたのは、俳優の谷原章介氏だった。男性向けファッション誌「メンズノンノ」の専属モデルとしてキャリアをスタートしてから、27年が経過していた。一介の男性モデルが国民的なイベントの司会を行うまでになる。その歩みは決して一足飛びに駆け上がってきたものではなかった。

待っているだけでは誰も席など譲ってはくれない

谷原 章介 氏 インタビュー

- 谷原氏は1972年に神奈川県綱島で生まれた。後に第二次ベビーブームと呼ばれる4年間の始まりにあたるこの年、日本国内で200万人を超える新生児が生まれている。

谷原氏 : 同世代がとにかく多かったんですよね。小学校もひとクラスで40人以上いましたし、中学校の時点で15クラス、高校も11クラスありました。

- いつ、どこで生まれるかは誰も選ぶことができない。しかし、出生環境は人生に大きく影響する。

谷原氏 : 我々は人数が多かったからかもしれませんが、なんとかこの中で競争を勝ち抜かなければならないという意識がある世代かもしれませんよね。黙っていたら埋もれてしまうわけじゃないですか。『どうぞ、あなたの順番ですよ』と回ってなんてきませんからね。

- 知らぬ間に植え付けられたこの意識が、後に俳優、タレント、司会者として活動の幅を広げていく谷原氏を育て上げていく。

芸能界入りを果たしたのは1992年のこと。「メンズノンノ」の専属モデルに応募したところ採用された。およそ2年間活動を続け、刺激的な毎日を過ごしてはいたものの、そこはかとない不安も同時に抱えていた。

谷原氏 : モデルをやってみると、女性モデルのほうが圧倒的に雑誌などの仕事が多いし広告も多いので彼女たちのほうが収入面で恵まれているんです。
一方で僕はモデルとしては二流でした。ちょっと顔の良い男性モデルなんて掃いて捨てるほどいるんですよ。そんな世界でどう生き抜こうかと考えたときに、モデルとして仕事を続けることはできるかもしれないけど、いつかジリ貧になりそうだなと感じていたんです。果たして僕は家庭を持って、家族を養えるのかって。

- この仕事がいつまで続くか分からない。ならば次にどのような一歩を踏み出すのか、順風が吹いている間に複数の選択肢を準備をしておく。谷原氏の人生はその選択の連続だった。

谷原氏 : どうやったら生き残れるんだろう。どういう方向性なら自分に合っているんだろう。自分を活かせる道はないかと常に模索しています。そういう選択肢を自分の中で増やす作業は日々しています。モデルで行き詰まりそうだ。それなら俳優だったらモデルの世界で感じたような男と女のギャップはないかもしれないなとか、そういった次のステップを探す作業は仕事がある状況の中で考えています。

- 新たな世界に踏み出したい、そう願った谷原氏が俳優に挑戦するのは自然な成り行きだった。
1995年、映画「花より男子」でスクリーンデビュー。同じ年にTBS系列「未成年」でドラマデビューも果たす。以後、映画、ドラマ、舞台に引っ張りだこの人気俳優として大活躍を続けることになる。

<中編に続きます>

Profile

谷原 章介 氏

1972年、神奈川県横浜市生まれ。1992年『メンズノンノ』の専属モデルに。1995年に映画「花より男子」で俳優デビュー。以後、二枚目役からユーモラスな役まで幅広く、映画、ドラマ、舞台で活躍する。2000年代からはバラエティ番組にも挑戦。その柔和で庶民的な人柄が人気を博し、やがて司会業にも挑戦。「王様のブランチ」、「パネルクイズ アタック25」など数多くの番組でMCを務める。2021年からは朝の情報番組「めざまし8」の総合司会に就任。