「IPアドレス」という用語を聞いたことがあっても、IPアドレスとはいったいどのようなものなのか、またIPアドレスから個人情報が特定できるかどうかなどがわからないという方もいらっしゃるでしょう。
投稿者のIPアドレスは容易に特定することができるのでしょうか?
また、IPアドレスがわかれば、そこから住所や氏名などの個人情報が特定されるのでしょうか?
今回は、誹謗中傷投稿などをした投稿者のIPアドレスを特定する方法やIPアドレスから住所や氏名を特定する方法などについて、弁護士が詳しく解説します。
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IPアドレスとは
IPアドレスとは、パソコンやスマートフォンなどインターネットに接続する機器に割り当てられる、インターネット上の住所のようなものです。
IPアドレスは、情報を送受信するための技術上の必要性から割り振られています。
IPアドレスには、グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスがあります。
ここでは、それぞれの概要について解説します。
グローバルIPアドレスとは
グローバルIPアドレスとは、インターネットへ接続する際に使われるIPアドレスです。
発信者情報開示請求の文脈で単に「IPアドレス」といった場合は、こちらを指していることが多いでしょう。
グローバルIPアドレスは「〇〇〇.〇〇〇.〇〇〇.〇〇〇」のように、0から255の数字の4組で表記されます。
プライベートIPアドレスとは
プライベートIPアドレスとは、会社や自宅など限られた範囲内での通信(ローカルネットワーク)で用いられるIPアドレスであり、「ローカルIPアドレス」と呼ばれることもあります。
プライベートIPアドレスはそのローカルネットワーク内で重複して用いられることはないものの、他のローカルネットワーク内で使用されるプライベートIPアドレスと同じ番号が用いられることは珍しくありません。
グローバルIPアドレスを「外部につながる電話番号」、プライベートIPアドレスを「内線電話番号」とたとえられることもあります。
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IPアドレスだけで個人情報を特定できる?
IPアドレスがわかれば、そこから個人情報を特定できるのでしょうか?
順を追って解説します。
なお、これ以後単に「IPアドレス」と表記する際は、グローバルIPアドレスを指すものとします。
IPアドレスだけでは住所・氏名までは特定できない
IPアドレスが判明したからといって、そこから個人の住所や氏名が特定できるわけではありません。
IPアドレスと、住所や氏名が紐づいた情報が公表されているわけではないためです。
なお、所定のツールにIPアドレスを入力することによって、次の情報まではわかる可能性があります。
- 接続している国、地域、郵便番号
- 接続に使用しているプロバイダ
接続プロバイダに開示請求をすることで契約者の住所や氏名がわかる
IPアドレスを見ただけでは、個人を特定することはできません。
しかし、接続プロバイダ(KDDIやNTTなど)にIPアドレスをもとに情報の開示請求がなされると、プロバイダ契約者の住所と氏名が判明します。
当然ながら、契約書住所や氏名は重要な個人情報であるため、特に理由もなくプロバイダへ問い合わせても開示されることはありません。
一方で、他者の名誉を毀損しているなど権利侵害があると判断された場合は、開示が認められる可能性が高くなります。
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発信者のIPアドレスを特定する方法
インターネット上で匿名の投稿者に名誉毀損などがされた場合、相手を刑事告訴したり相手に対して損害賠償請求をしたりするためには、これに先立って相手の身元を特定しなければなりません。
これには、原則として「IPアドレスなどの特定」と「IPアドレスなどに基づく住所氏名の特定」の2段階のステップが必要となります。
1ステップ目となるIPアドレスなどの特定方法は次のとおりです。
サイトなどの運営者に任意での開示を請求する
1つ目は、名誉毀損などの書き込みがなされた5ちゃんねるやX(旧Twitter)などの掲示板やSNSの管理者(「コンテンツプロバイダ」といいます)へ、任意でIPアドレスなどの開示を求める方法です。
ただし、むやみに投稿者のIPアドレスなどを開示すると掲示板やSNSなどの信用が失墜する可能性があるほか、開示の対象となった投稿者からコンテンツプロバイダに対して損害賠償請求などがなされる可能性があります。
そのため、一見名誉毀損など権利侵害があるように見える投稿であっても、コンテンツプロバイダが独自の判断でIPアドレスを開示することはそう多くはありません。
裁判所の手続きを利用して開示請求をする
もっとも一般的な方法は、裁判所での手続きを利用して開示請求をする方法です。
裁判所へ発信者情報開示請求を申し立て、裁判所からコンテンツプロバイダへの「開示せよ」との決定を出してもらうことで、IPアドレスなどの開示を受けることが可能となります。
なお、プロバイダ責任制限法の改正により、コンテンツプロバイダへのIPアドレスなどの開示請求と、次で解説する接続プロバイダへの開示請求が1つの手続きで行えることとなりました。
これにより、手続きにかかる時間の短縮が可能となっています。
ただし、従来の方法をとることと、改正により新設された方法をとることのどちらが適しているかは、コンテンツプロバイダの種類や状況によって異なります。
弁護士へ相談したうえで選択するようにしてください。
発信者のIPアドレスが特定できない主なケース
次の場合は、発信者のIPアドレスを特定することができません。
権利侵害が認められない場合
発信者情報の開示を受けるには、その発信者が権利侵害をしたことが必要です。
いくら不愉快な内容であったとしても、権利侵害であるとまではいえない場合は、IPアドレスなどの開示を受けることはできません。
投稿から時間が経ちすぎている場合
投稿内容が権利侵害にあたるものであったとしても、投稿から時間が経ちすぎている場合はIPアドレスなどの開示を受けることはできません。
なぜなら、時間が経過すると投稿などのログが消えてしまい、コンテンツプロバイダに情報が残っていない可能性が高くなるためです。
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IPアドレスから住所・氏名を特定する方法
IPアドレスや接続プロバイダが判明したら、それらの情報をもとに相手の住所・氏名の特定を目指します。
その方法は、次のとおりです。
接続プロバイダに情報開示請求をする
IPアドレスなどがわかったら、投稿者が接続に使用したプロバイダ(KDDIやNTTなど)へ契約者の情報開示を求めます。
こちらも、任意での(裁判外での)開示には応じてもらえない可能性が高いため、裁判所へ発信者情報開示請求訴訟を申し立てて行うことが一般的です。
開示が認められると、契約者の住所や氏名などを特定できます。
発信者のIPアドレスや住所氏名を特定するためのポイント
インターネット上で名誉毀損などの被害に遭った場合、発信者のIPアドレスや住所氏名の特定を成功させるためには、どのような点に注意すればよいでしょうか?
投稿者を特定するためのポイントは次のとおりです。
できるだけ早期にとりかかる
インターネット上で名誉毀損などの被害に遭ったら、できるだけ早期にとりかかることをおすすめします。
なぜなら、ログは永久に保存されるわけではなく、一定期間が過ぎると消去されてしまうためです。
ログが消去されてしまった後では、いくら悪質な投稿であってもIPアドレスなどの開示を受け相手を特定することはできなくなります。
ログの保存期間はプロバイダによって異なるものの、3か月や6か月程度とされていることが一般的です。
そのため、インターネット上での権利侵害がされた場合の法的措置は時間との勝負であるといえます。
名誉毀損など権利侵害がなされたら、1人で長期間悩むのではなく、その日や翌日などできるだけ早期に弁護士へコンタクトをとるようにしてください。
誹謗中傷などの被害に遭ったらすぐに証拠を残す
インターネット上で誹謗中傷などの権利侵害がなされたら、すぐに投稿の証拠を残しましょう。
IPアドレスなどの開示を求めて開示請求をして相手を特定するには、裁判所に権利侵害があった旨の主張をする必要があるところ、証拠がなければ開示を認めてもらうことができないためです。
また、インターネット上の投稿はいつまでも残っているとは限らず、投稿者が自ら削除したり他のユーザーが管理者に通報したりすることで消えてしまう可能性があります。
そのため、権利侵害の投稿を見つけたらその場ですぐにスクリーンショットを撮影して証拠を残すことをおすすめします。
スクリーンショットは、次の情報などが掲載されるように撮影してください。
(※あくまでも一例であり、すべてのコンテンツプロバイダに対応したものではありません。)
- 投稿の内容
- 投稿のURL
- 投稿の日時
- 誹謗中傷などの投稿にまつわる一連の投稿内容
- 誹謗中傷投稿をした者のユーザー名等(Xの場合、「@」から始まるもの)
なお、スマートフォンからスクリーンショットを撮影する場合は、URLなどの表示が不完全となる可能性があります。
そのため、スマートフォンではなく、可能な限りパソコンからスクリーンショットを撮影することをおすすめします。
削除請求は慎重に行う
自身を誹謗中傷する内容がインターネット上に書き込まれた場合、その情報が人の目に触れてほしくないとの思いから、できるだけ早期に削除してほしいと考えるかもしれません。
たとえ根も葉もない内容であったとしても、情報が拡散される中で書き込みを信じてしまう人が生じる可能性があるためです。
しかし、相手の特定を目指すのであれば、安易に投稿の削除請求をすることはおすすめできません。
なぜなら、削除請求が認められると、権利侵害の証拠が消えてしまうこととなるためです。
そのため、焦って削除請求をするのではなく、まずは先ほど解説した証拠の保全を行ってください。
そのうえで、スクリーンショットなどに漏れがないことを弁護士に確認してもらい、弁護士の意見を聞いたうえで削除請求をするとよいでしょう。
なお、証拠を残したうえで削除請求をする場合であっても、投稿者に直接投稿を消すよう求めることはおすすめできません。
直接削除を求めると、相手がヒートアップして誹謗中傷がエスカレートする危険性があるためです。
また、相手と言い合いとなるリスクもあり、言い返した内容によっては相手から誹謗中傷であるなどとして法的措置をとられてしまうかもしれません。
誹謗中傷トラブルに強い弁護士へ相談する
インターネット上での名誉毀損などのトラブルに自分で対処することは容易ではありません。
なぜなら、IPアドレスなどの開示を受けたり住所や氏名の特定をしたりするためには、法令や手続きに関する知識やノウハウが必要であるためです。
開示請求は所定の用紙を裁判所に出しさえすればよいわけではなく、開示を認めるだけの法的な根拠があることを明確に指摘し、説明しなければなりません。
また、自分で行おうとして法令や手続きを調べているうちにログの保存期間が過ぎてしまい、IPアドレスなどの特定が困難となるリスクもあります。
さらに、誹謗中傷問題などの解決は相手を特定することがゴールではなく、その後刑事告訴をしたり損害賠償請求をしたりすることが目的です。
これらも、自分で行って希望を実現することは容易ではありません。
このような理由から、インターネット上で名誉毀損などの投稿をした相手の特定をする際は無理に自分で行うのではなく、誹謗中傷問題に強い弁護士へご相談ください。
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まとめ
IPアドレスは、インターネット上の住所のようなものです。
しかし、IPアドレスのみを見たからといって相手の個人情報が特定できるわけではありません。
ただし、誹謗中傷などの被害に遭った場合は開示請求をすることで、プロバイダの契約者住所や氏名などが特定できる可能性があります。
インターネット上での誹謗中傷など権利侵害などへの対応は、時間との勝負であるといっても過言ではありません。
誹謗中傷などの被害に遭ってお困りの際は、できるだけ早期に弁護士へご相談ください。
Authense法律事務所では誹謗中傷問題の解決に力を入れており、これまでも多くの発信者の特定や損害賠償請求を成功させてきました。
インターネット上でのトラブルでお困りの際は、ぜひAuthense法律事務所までお気軽にご相談ください。
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