コラム
公開 2023.02.20

侮辱罪で訴えるには?成立要件と訴訟の流れを弁護士がわかりやすく解説

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インターネット上などでの誹謗中傷が社会問題となっています。

侮辱行為をした相手を訴えるには、どうすればよいのでしょうか?
侮辱行為で相手を訴えるには、相手を侮辱罪などで刑事告訴する方法と、相手に対して損害賠償請求をする方法が存在します。

今回は、侮辱行為をした相手を訴える方法などについて、弁護士がくわしく解説します。

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侮辱罪とは

他者を侮辱した場合には、刑法上の侮辱罪に該当する可能性があります。
はじめに、侮辱罪の要件について解説していきましょう。

侮辱罪の成立要件

侮辱罪とは、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者」が該当する罪です(刑法231条)。

まず、「事実を適示しなくても」という点が、事実の適示が必要である「名誉毀損罪」と大きく異なる点です。
つまり、たとえば「バカ」や「ブス」など抽象的な表現であっても、侮辱罪に該当する可能性があります。

なお、どの程度ひどい言葉であれば侮辱罪に該当するなどの明確な線引きがあるわけではありません。
侮辱罪にあたるかどうかは、経緯や内容によって、総合的に判断されます。

また、侮辱罪が成立するためには、「公然と」侮辱したことが必要です。
そのため、他者がいない密室で行われた侮辱行為や他者が見ることのできない個別メッセージでの侮辱行為などは、原則として侮辱罪に問えないこととなります。

一方、SNSやインターネット上の掲示板への投稿、ブログのコメント欄への投稿などでされた侮辱行為などは誰もが見ることができるため、侮辱罪の成立要件を満たす可能性が高いでしょう。

誹謗中傷に対してとりうる法的措置

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相手から侮辱などの誹謗中傷を受けた場合には、どのような法的措置が検討できるのでしょうか?
相手に対してとりうる主な法的措置は、次のとおりです。

なお、相手の刑法上の罪に問うための刑事告訴と民事上の責任を取らせるための損害賠償請求は、いずれか一方のみを行うことも可能ですし、両方の措置をとることも可能です。

両方を行うべきかいずれか一方を行うべきかは、相手の行為の態様や侮辱された側が何を求めているかなどによって異なりますので、あらかじめ弁護士へご相談いただいたうえ検討するとよいでしょう。

刑法上の罪に問う

1つめの方法は、相手を刑法上の罪に問うことです。

侮辱罪や名誉毀損罪は、告訴がなければ起訴することができない「親告罪」であるため、相手を刑法上の罪に問うためには、刑事告訴をしなければなりません。
また、脅迫罪は親告罪ではないものの、相手を罪に問いたい場合には、刑事告訴をした方がよいでしょう。

侮辱行為が該当する可能性のある主な罪には、次のものなどが存在します。

侮辱罪

先ほど解説したように、侮辱罪とは「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者」が該当する罪です。
公開の場で抽象的な悪口を言われた場合には、こちらを検討することとなります。

侮辱罪の法定刑は、「1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」です。
以前は「拘留または科料」のみでしたが、インターネット上での誹謗中傷が社会問題となっていることを受け、2022年7月7日より厳罰化されました。

名誉毀損罪

名誉毀損罪とは、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者」が該当する罪です(同230条)。
侮辱罪とは異なり、「事実を適示」することが要件とされています。

なお、ここでいう「事実」とは「本当のこと」という意味ではなく、「具体的な内容を適示する」という意味合いです。
たとえば、「〇田太郎氏は裏口入学だ」などとSNSに記載することは、名誉毀損罪に該当し得るということです。
ただし、公益目的である等一定の要件を満たす場合には、罰せられないとされています。

また、侮辱罪と同じく「公然と」行うことが要件とされているため、他者が見ることのできない個別メッセージなどでの発言を名誉毀損罪に問うことは原則として難しいでしょう。

名誉毀損罪の法定刑は、「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」です。

脅迫罪

脅迫罪とは、相手や相手の親族の「生命、身体、自由、名誉、又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者」が該当する罪です(同222条)。
こちらは「公然と」などは要件とされていませんので、たとえば個別メッセージで「殺してやる」などと送った場合などにも、脅迫罪が成立する可能性があります。

脅迫罪の法定刑は、「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」です。

損害賠償請求をする

もう1つの方法は、相手に対して損害賠償請求(慰謝料請求)をすることです。
こちらは民事上の請求であり、警察や検察は関係ありません。

なお、民事上の損害賠償請求が認められるための要件は、刑事上の侮辱罪などの成立要件と重なる部分もあるものの、同一ではありません。
刑法上の侮辱罪では有罪とならなかった場合であっても、損害賠償請求が認められる可能性があります。

侮辱罪で相手を訴える方法と流れ

侮辱罪で相手を訴えるには、どのような手順を踏めばよいのでしょうか?
侮辱をした相手に対して、刑事告訴や損害賠償請求などの法的措置をとる際の基本の流れと方法は、次のとおりです。

証拠を集める

後述のように、侮辱行為を受けたら、まずは侮辱されたことの証拠を残しましょう。

いくら侮辱されたことを主張しても、証拠がなければ相手に対して損害賠償請求をすることや相手を侮辱の罪に問うことは困難となるためです。
そのうえで、早期に弁護士へご相談ください。

情報開示請求をする

相手に対して損害賠償請求をしたい場合には、これらに先立って、相手が誰であるのかを特定しなければなりません。
相手が誰であるのかわからなければ、損害賠償請求をすることができないためです。

なお、刑事告訴を行う場合も、先に相手が誰であるのかを特定することが多いです。

情報開示請求は多くの場合、コンテンツプロバイダ(Twitter社など)への請求とアクセスプロバイダ(NTTなど)への請求の、二段階で必要になります。
なぜなら、コンテンツプロバイダは投稿者の氏名や住所までの正確な情報を持っていないことが少なくないためです。

そのため、第一段階として、まずコンテンツプロバイダから相手のIPアドレスやタイムスタンプなどの開示を受けます。
これらの情報をもとに、第二段階としてアクセスプロバイダに開示請求を行い、ようやくアクセスプロバイダの契約者の住所と氏名が判明するという流れです。

ただし、コンテンツプロバイダやアクセスプロバイダに直接開示請求をしたところで、任意で開示される可能性は小さいのが実際です。
侮辱投稿をした相手の情報も個人情報である以上、任意での開示には大きなリスクが伴うためです。
そのため、裁判所に発信者情報開示命令の申立てを行い、裁判所から発信者情報開示命令を出してもらう手続きが必要となります。

なお、発信者情報開示のための裁判手続きは、これまでコンテンツプロバイダへの請求手続きとアクセスプロバイダへの請求手続きを1つずつ分けて行う必要がありました。
しかし、これでは多大な手間と時間を要することから、2022年10月1日から施行された改正により、2つの開示請求を1つの手続きでまとめて行えることとなっています。

刑事告訴をする(刑法上の罪に問いたい場合)

侮辱投稿をした相手を侮辱罪の罪に問いたい場合には、警察官または検察官に告訴状を提出して刑事告訴を行います。

ただし、警察は人命にかかわる事件などを多数抱えていることも多く、告訴状をなかなか受理してもらえない場合もあります。
告訴状を受理される可能性を高めるため、弁護士へのご依頼を検討いただくとよいでしょう。

損害賠償請求をする(民事上の責任を問いたい場合)

侮辱投稿をした相手に対して損害賠償請求をしたい場合には、相手に対して内容証明郵便を送るなどして損害賠償請求をします。
相手から減額の申し入れなどがされる場合もありますので、あらかじめ妥協点を検討しておくとよいでしょう。

相手が任意での支払いに応じない場合には、訴訟により請求することとなります。
侮辱行為で認められる損害賠償額は通常数万円から数十万円程度です。
そのため、あらかじめ弁護士へご相談のうえ、金額の想定をしておくとよいでしょう。

侮辱罪で相手を訴える際のポイント

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侮辱罪で相手を訴えるには、どのような点に注意すればよいのでしょうか?
主なポイントは、次のとおりです。

証拠を残す

侮辱罪で相手を訴えるには、まず侮辱行為の証拠を残すことが重要です。
インターネット上で侮辱をされた場合には、次の内容などがわかる画面のスクリーンショットを残しましょう。

  • 侮辱された投稿
  • 相手のアカウント名やユーザー名
  • 投稿のURL
  • 投稿の日時

誹謗中傷問題に強い弁護士に相談をする

誹謗中傷への対応を、自分で行うことはおすすめできません。
相手と直接交渉をした結果、誹謗中傷が激化したり、売り言葉に買い言葉となり相手にとって有利な証拠を残してしまうリスクもあります。

また、発信者情報の開示には相当の理由が必要であり、やみくもに請求をしたところで開示が認められるものではありません。
法的な根拠が不足したままでは開示請求が認められない可能性があるほか、手続に多大な労力を要してしまう可能性もあるでしょう。

そのため、自分を侮辱した相手を訴えたい場合には、誹謗中傷問題に強い弁護士に早期にご相談ください。

できるだけ早期に取り掛かる

侮辱行為で相手を訴えたい場合には、できるだけ早期に取り掛かることをおすすめします。
なぜなら、時間の経過とともに投稿のログが消え、証拠が消滅してしまう可能性が高くなるためです。

ログの保存期間はSNS運営企業やプロバイダなどによって異なりますが、3か月や6か月程度といわれています。
また、相手が投稿やアカウントを消して、証拠隠滅をはかる可能性もあります。

そのため、インターネット上での誹謗中傷への法的措置をとるためには、対応のスピードがカギとなります。

まとめ

侮辱行為をした相手に対して損害賠償請求をするにも、まず相手が誰であるのかを特定しなければなりません。
そのため、インターネット上での誹謗中傷に法的措置を執るためには、まずは相手を特定するための発信者情報開示請求が必要となります。

そして、この手続きを自分で行うことは容易ではありません。
また、時間が経過すれば投稿のログが消えるなどして、相手を訴えることが難しくなる可能性もあります。

そのため、侮辱行為をした相手を訴えたい場合には、まずはスクリーンショットなどで証拠を残したうえで、できるだけすみやかに弁護士にご相談ください。

Authense法律事務所にはインターネット上での誹謗中傷問題にくわしい弁護士が多数在籍しており、日々トラブルの解決にあたっています。
誹謗中傷に関するトラブルのご相談は、初回無料です。

侮辱罪で相手を訴えたい場合や侮辱をした相手に対して損害賠償請求をしたい場合には、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(千葉県弁護士会)
早稲田大学法学部卒業。早稲田大学大学院法務研究科修了。企業法務を中心に活動。ベンチャー企業から上場企業まで幅広く支援。エンタメ業界、バイオ・繊維業界、ファッション業界、インターネット権利侵害問題に注力、豊富な実績を有する。離婚・相続問題、刑事事件、交通事故被害などの一般民事案件の実績も多数。
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