公開 2024.07.11BusinessTopics

会社の解散・清算に必要な手続き・流れは?スケジュールを弁護士がわかりやすく解説

会社法

会社を畳む際は、単に解散登記だけをすればよいわけではありません。
会社を畳むには、解散と清算の手続きが必要です。

では、会社の解散と清算には、どのような手続きが必要なのでしょうか?
また、手続きのスケジュールはどのような点に注意して設定するとよいのでしょうか?

今回は、会社の解散や清算に必要な手続きとスケジュールについて、弁護士がくわしく解説します。

目次
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会社の清算とは

会社は、設立登記をすることによって設立されます。
一方で、冒頭でも触れたように、登記をするだけでは会社を消滅させることはできません。

会社を畳むには、債権を回収し、債務を弁済し、株主へ残った財産を分配するなどさまざまな手続きが必要です。
このような手続きを踏まないと、会社の債権者が債権を回収する機会を失い不利益を被るほか、会社に残っていた財産が宙に浮いてしまうためです。

このように、会社を畳むために必要となるさまざまな手続きを、「清算」といいます。

2種類の清算の概要

清算には、「通常の清算」と「特別清算」の2つがあります。
ここでは、それぞれの清算について概要について解説します。

通常の清算

通常の清算とは、特別清算ではない清算です。
この記事では、通常の清算をすることを前提に、必要な手続きとスケジュール設定のポイントを解説します。

特別清算

特別清算とは、裁判所の監督下で進める清算のことです。
債務超過の疑いがあるなど、清算中の会社に清算の遂行に著しい支障をきたす事情がある場合などには、特別清算となります。

会社清算の手続きとスケジュール例

会社の清算をするには、どのような手続きをどのようなスケジュールで行う必要があるのでしょうか?
ここでは、清算人を1人とする監査役設置会社が通常の清算をするケースを前提に、主に必要となる手続きとスケジュール例を紹介します。

日程 手続
6/30 株主総会の開催(解散決議等)、清算人の就任
7/3 会社解散、清算人就任の登記
7/10 債権申出の公告及び知れたる債権者に対する催告
7/12 所轄税務署長等への届出
同日 財産目録等の作成
7/31 株主総会の開催(財産目録等の承認)
8/30 解散の日に終了する事業年度の確定申告
9/10 公告期間・催告期間の満了
現務の結了、財産の換価処分、債権の取立て、債務の弁済
翌年

6/30

清算事務年度(第1期)の終了

貸借対照表等の作成

8/31 清算事業年度の確定申告
貸借対照表等の監査
9/17 貸借対照表等の備置き
9/25 定時株主総会の開催(貸借対照表の承認、事務報告内容の報告)
10/25 残余財産の確定
11/25 最終事業年度確定申告手続
11/26 残余財産の分配
12/15 清算事務の終了
12/20 株主総会の開催(決算報告の承認)
12/22 清算結了の登記
12/26 清算結了届出書提出(税務署へ)

なお、清算に必要な手続きや適切なスケジュールは、会社の状況などによって異なる可能性があります。
会社を清算しようとする際は、清算手続きにくわしい弁護士のサポートを受けたうえで、状況に応じた必要な手続きの洗い出しとスケジュール設定をしてください。

株主総会を開催する

はじめに、株主総会を開催して会社の解散を決議します。
この決議は、特別決議によって行うことが求められます(会社法309条2項11号)。

特別決議とは、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権における3分の2以上の賛成を必要とする決議です。
基準日を定めた場合には、基準日の2週間前までに基準日などの公告をしなければなりません(同124条2項、3項)。

また、会社を清算するには、清算手続きを担う「清算人」が必要です。
そのため、取締役以外の者を清算人とする場合は、解散の決議と併せて清算人選任の決議も行います(同478条1項3号)

なお、会社は定款で事業年度を定めることが一般的であるものの、解散後はこれとは異なる期間が事業年度(「清算事務年度」といいます)となります。
解散後も清算結了までには複数回の株主総会などが必要となりますが、そもそもの事業年度が異なることとなるため、定款で定めた基準日や定時株主総会の開催時期が実態にそぐわなくなる可能性があります。
これに備え、今後の事務手続きを減らすため、この時点で清算事務年度に合わせた定款変更をしておくことも検討すべきでしょう。

解散と清算人就任の登記をする

会社を解散したら、解散日から2週間以内に、本店所在地において解散の登記を行います(同926条)。
併せて、清算人の選任登記も申請します(同928条1項)。

解散登記と清算人の選任登記は別で行っても構いませんが、申請すべきタイミングが同じであるため、同時に行うことが一般的でしょう。

なお、厳密には清算人の清算登記の期限は原則として解散から2週間以内であるものの、解散とは異なる時期に清算人が選任された場合は、選任から2週間以内が登記期限となります(同3項)。

債権申出の公告や催告をする

会社が消滅すると、会社の債権者はその後債権を回収する機会を失ってしまいます。
そこで、解散後は遅滞なく債権の申出をすべき旨の公告をするとともに、知れている債権者に対しては個別に催告しなければなりません(同499条1項)。

債権の申出期間は2か月以上を設ける必要があるため、スケジュール設定に注意が必要です。

なお、公告には、債権者が所定の期間内に申出をしないときは清算から除斥される旨を付記する必要があります(同2項)。

所轄税務署長等に届出をする

会社が解散したら、清算人は遅滞なく所轄税務署長と都道府県税事務所に対して、次の旨を届け出なければなりません。

  • 会社が解散した旨
  • 清算人に就任した旨

なお、解散前後では、前事業年度開始の日から解散日までの期間が1事業年度として取り扱われます。
そのため、解散の翌日から2か月以内に、その事業年度分の確定申告をしなければなりません(法人税法74条、77条)。

また、労働基準監督署や年金事務所、公共職業安定所などに対して、解散した旨を届け出る手続きも必要です。

会社財産調査をして財産目録等を作成する

清算人は会社の財産を調査して、解散日時点での財産目録と貸借対照表を作成します(会社法492条1項)。
これらは、解散後遅滞なく行わなければなりません。

株主総会を開催する

株主総会を開催し、清算人が作成した財産目録と貸借対照表の承認を受けます(同492条2項)。
この承認は、普通決議で行います。

なお、株主全員の全員の同意が得られれば、招集手続きや株主総会決議の省略が可能です(同300条、319条)。

裁判所に債務弁済許可申請をする

債権者による債権申出期間中、会社は原則として、債権を弁済することができません(同500条1項)。
ただし、次に該当する債権に係る債務については、裁判所の許可を得ることで弁済することが可能です(同2項)。

  1. 少額の債権
  2. 清算会社の財産につき存する担保権によって担保される債権
  3. その他、弁済しても他の債権者を害するおそれがない債権

たとえば、公租公課の納付や税務申告費用、登記申請費用などを支払うために、弁済許可を申請することが多いでしょう。
許可の申請先は、清算会社の本店所在地を管轄する地方裁判所です(同868条1項)。

財産の換価処分等をする

清算人が、会社の財産の換価処分や債権の取立てなどを行います(同481条)。
換価の方法に定めはないため、個々の財産を売却したり事業の一部を譲渡したりするなど、任意の方法で構いません。

併せて、換価や債権の取立てによって回収した金銭などをもとに、債権者による債権申出期間の経過後に債務を弁済します。
すべての債務を弁済したら、残余財産を確定させます。

貸借対照表等を作成する

会社が解散してから1年ごとの期間が、「清算事務年度」として区切られます。
清算事務年度が満了したら、その清算事務年度ごとに貸借対照表と事務報告、附属明細書を作成しなければなりません(同494条1項)。

確定申告をする

清算事務年度ごとに、その年度分に係る確定申告をしなければなりません。
確定申告の期限は、通常の確定申告と同じく、その清算事務年度(事業年度)終了の日の翌日から2か月以内です(法人税法74条、77条)。
申告書の提出先は、清算会社の所在地を管轄する税務署長です。

監査を受ける

監査役設置会社である場合は、作成した貸借対照表と事務報告、附属明細書などについて、監査役の監査を受けます(会社法495条)。

貸借対照表等を備え置く

監査役の監査を受けた貸借対照表と事務報告、附属明細書に監査報告を加えたものを、本店に備え置きます(同496条1項)。
備置きが必要な期間は、定時株主総会の1週間前の日から、本店所在地における清算結了登記のときまでです。
ただし、定時株主総会を省略する場合は、その提案があった日から備え置きます。

定時株主総会を開催する

定時株主総会で、監査役の監査を受けた事務報告の内容について報告の上、貸借対照表の承認を受けます(同497条)。
この決議は、普通決議によって行います。

なお、株主全員の全員の同意が得られれば、招集手続きや株主総会決議の省略が可能です(同300条、319条)。

最終事業年度の確定申告をする

残余財産が確定したら、最終事業年度の確定申告を行い必要な納税をします。
この確定申告と納税の期限は、残余財産の確定日の翌日から1か月以内であり、かつ残余財産の分配実施の前日までです(法人税法77条)。
最終事業年度分だけは確定申告の期限が異なる(2か月以内ではない)ため、期限を誤らないようご注意ください。

残余財産を分配する

会社債務の弁済が完了した後、なお残った財産(「残余財産」といいます)がある場合は、これを株主に分配します(会社法481条3号)。
残余財産を分配するため、清算人は次の事項を決定しなければなりません。

  1. 残余財産の種類
  2. 株主に対する残余財産の割当てに関する事項

なお、株主への残余財産の割当ては各株主の保有株式数に応じて定める必要があり、恣意的に一部の者だけに多く分配したり、一部の者を分配対象から恣意的に外したりすることはできません(同504条3項)。
このような制限があることから、残余財産の分配決定に株主総会決議は必要ありません。

ただし、会社は金銭以外に財産で残余財産を分配する方法があるものの、この場合は株主への事前通知が必要です。
そのうえで、株主は所定の期間内に、(金銭以外の財産ではなく)金銭での分配を請求できます。

金銭以外で残余財産を分配しようとする場合、会社は分配請求権の行使期間末日の20日前までに、次の事項を株主に通知しなければなりません(同505条1項、2項)。

  1. 残余財産の種類
  2. 株主に対する残余財産の割当てに関する事項
  3. 金銭分配請求権の行使期間
  4. 一定数未満の株式を有する株主に対して残余財産を分配しない場合は、その旨

この場合において、株主が期間内に金銭分配請求権を行使した場合は、会社はその株主に対して残余財産の価額に相当する金銭を支払わなければなりません(同3項)。

決算報告を作成する

清算事務が終了したら、清算会社は遅滞なく決算報告を作成します(同507条1項)。
この決算報告には、次の事項などを記載しなければなりません(会社法施行規則150条)

  1. 債権の取立て、資産の処分その他の行為によって得た収入の額
  2. 債務の弁済、清算に係る費用の支払その他の行為による費用の額
  3. 残余財産の額(支払税額がある場合には、その税額と、その税額を控除した後の財産の額)
  4. 1株当たりの分配額(種類株式発行会社にあっては、各種類の株式1株当たりの分配額)

株主総会を開催する

作成した決算報告を株主総会に提出して、承認を受けます(会社法507条3項)。
この承認は、普通決議で行います。

なお、株主全員の同意があれば、招集手続きや株主総会決議を省略できます(同300条、319条)。

この株主総会による決算報告の承認をもって、清算は結了となります。

清算結了登記をする

清算が結了したら、株主総会から2週間以内に本店所在地において清算結了の登記をします(同929条1項)。
清算結了の登記後は、遅滞なく所轄税務署などに届出をします。

これをもって会社の登記簿が閉鎖され、正式に会社が畳まれたこととなります。

なお、会社財産が残存する等、未了の清算事務があるときは、会社は消滅せず、なお権利能力を有することになります。

まとめ

会社の清算について概要を解説するとともに、清算に必要な手続きとスケジュール設定のポイントを紹介しました。

会社は、登記をするだけで簡単に消滅させられるものではありません。
本文で解説したように、会社が有していた財産を換価したり債権を回収したりしたうえで、残った債務を債権者に弁済する手続きなどが必要です。

債務を弁済してなお残った財産がある場合はこれを株主に分配し、株主総会で決算報告の承認を得ることで、ようやく清算結了となります。
清算結了には長期間を要することも多いため、全体の流れを理解したうえで、最終的な結了見込みの時期を把握しておくとよいでしょう。

なお、今回紹介したのは、清算結了に関する代表的な手続きとスケジュールの一例です。
必要となる手続きや適切なスケジュールは会社の状況などによって異なる可能性があります。
そのため、実際に会社を清算しようとする際は、清算手続きにくわしい弁護士にサポートを受けることをおすすめします。

記事監修者

Authense法律事務所
弁護士

水谷 友輔

(第二東京弁護士会)

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