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INNOVATORS
公開 2024.03.12

「識学」関連著書でベストセラー連発!
数値化・仕組み化の徹底で企業はどう変わるのか?(前編)

株式会社識学(東京都品川区)では、企業へのマネジメントコンサルティングを手掛けている。代表の安藤広大氏が著した著書「リーダーの仮面」「数値化の鬼」「とにかく仕組み化」(いずれもダイヤモンド社)のシリーズ三部作は100万部を超えるベストセラーとなり話題を集めている。

2023年現在、3000社を超える企業に導入されており、企業を仕事をする場に変革し業績を上げるという「識学」の考え方について、代表の安藤氏に話を聞いた。

識学とは「ロジック学問」

貴社では「識学」を企業に導入する事業を進めています。「識学」とはそもそもどのような考え方なのか、教えてください。

安藤広大氏(以下、安藤氏) : まず識学とは、人の意識構造に着目して研究、体系化された独自理論と説明しています。意識構造とは、人が物事を認識して行動に至るまでの意識の流れのことと定義しています。

では識学とは何か。識学では、物事を正しく認識すれば、正しい行動が取れると考えているのですが、前提となる認識を誤ると行動も誤ったものになってしまうと考えています。
その認識の誤りのことを、日本語では誤解あるいは錯覚と呼ぶわけですが、識学では誤解や錯覚がどのように起きるのか、どうすれば誤解や錯覚を起こさずに済むのかを体系化したものです。

たとえば『数値化の鬼』では時に心を鬼にして数字に向き合う重要性を説きましたが、人に対して何かを行うというよりも、事実としっかりと向き合うというシンプルな話なんです。
数字化すると現実を見なければなりません。しかし、現実を見るということは誤魔化せない状態です。人間は知らず知らずのうちに、自分の意識を誤魔化してしまうんですね。自分自身に対しても、上司や同僚に対しても。
その結果、現状の認識がズレ、認識がズレたがために以降のアクションもズレるという現象が起こります。そういったズレを人間の意識からも組織の仕組みからもなくしていくことを目的としています。

だから数字が大事だし、『とにかく仕組み化』で書いたようにマニュアルもとても大事なものになります。上司と部下の間やメンバー同士で認識がズレてしまうと、組織が一気に動かなくなってしまいます。ですので、認識のズレが起きない運営をしなければならないと、当たり前の話なのですが、多くの企業でできていないのではないかと思います。

企業が識学を導入するメリットについて教えてください。

安藤氏 : メリットは組織のムダがなくなり利益が向上することです。誤解や錯覚というのは組織上の無駄です。その無駄がなくなり売上や利益に繋がる活動に時間を費やせるので、業績が上がります。ただそれだけの話です。

企業経営を改善しようとするとき、なにかを付け加えようとしてしまうケースが多く見られます。新たななにかに取り組むといったことですね。エンゲージメントやモチベーションを高める運動しましょうといった活動をしてしまうのですが、我々は無駄を省いていくという考え方です。
付け加える場合には、その付け加えた新しい事象が組織に合わないことがあります。しかし識学の考え方では無駄を取り除くわけですから、しっかり正しく運営すれば導入前よりも売上が上がるわけです。

相互認識の誤解・錯覚

人間関係の悩みを無くす

職場における大きな悩みのひとつに人間関係が挙げられます。

安藤氏 : 仕事をしに出社しているのに、職場での人間関係で悩むってバカバカしいと思いませんか?
そのような悩みが発生する原因は、その組織内に属人的な領域が多く、人間関係に頼って仕事をしてるからです。

社員が各々の役割や責任を仕事で果たしていれば、人間関係によるもつれで仕事の生産性が落ちるということは本来起き得ないはずです。
識学では仕組み化や徹底した数値化を推進していきますので、人間関係のストレスも低減されていきます。識学を導入すると社内が殺伐とするといった誤解があるのですが、人間関係のストレスがなくなる効果の方が大きいんです。

少し話が逸れますが、識学を導入しようとすると必ず社内で反発が生まれます。反対する人たちというのは、自分の果たしている責任以上の権限を持ってしまっている人たちです。裏を返せば、職場で他の社員にストレスを与えてる人たち、またはその人が成果を挙げないことで他の社員がカバーせざるを得ない事態に陥っていることが明るみに出ることを恐れる人たちが反対するんですね。そのような社内の既得権益層が浮き彫りになるという意味でも識学の導入は効果があるのではと感じています。

社内のお局様やベテラン社員に仁義を通さないと仕事が進まないという話はよく聞きます。

安藤氏 : 私が新卒で入った会社でもベテランの女性社員に気に入られると仕事が進めやすいといったことがありました。いま考えればどう考えてもおかしいですよね。これはその社員に規定された権限以上の権限を持っていて、しかもその権限には責任との連動が起きていません。つまり特権なんですよね。この状態がはびこってると、組織内に空気の読み合いが求められるようになってしまうんです。

当然、お客様がどんなことを思っておられるかなど、外部の方に向けて空気を読む力は必要だと思うのですが、社内で顔色を伺い合って空気を読み合うというのは無意味ですよね。

人間対人間の関係にならない

そういった無駄な風潮が取り除かれれば仕事にフォーカスしやすくなりますね。識学を導入する際、最初のステップはどのようなところから入るのでしょうか?

安藤氏 : まずはトップである経営者に教えることから始まります。何万人も社員を抱える大企業では事業部単位での導入も進んでいますので、そういう場合には事業部長に識学を理解していただきます。

人の話を聞かないワンマン社長で「あとはうまくやっておいてよ」という場合にはどうされるのですか?

安藤氏 : その場合には口出しはせずに我々にお任せくださいとお約束していただきます。お約束していただけない場合にはお受けしないこともあります。
識学を理解せずにトップである社長に口を挟まれると、社員にとって社長の存在が言い訳になってしまうんです。社長もあんな感じだしオレたちもやらなくていいだろうと。
ただ、基本的には業務のオペレーションに少しでも関わるのであれば、社長からまずは講義を受けてくださいとお伝えしています。

安藤社長から見て、こういう企業は絶対に識学を取り入れたほうがいい企業の特徴はなにかありますか?

安藤氏 : 全企業に導入していただきたいのですが、強いていうなら人間関係によるトラブルが多い会社ですね。
大体、人が辞める場合には人間関係で辞めてしまいます。それはもったいないですよね。前向きな理由で辞めていく、もしくは社内での競争に敗れて辞めざるを得なくなっていく。これは組織の成長を考えると致し方ないと思います。
現在、正しいとされているマネージメントでは人間との関係において上司と部下の関係を作っていくことが推奨されています。1on1はその典型例です。上司は部下のプライベートの話まで掘り下げて、人間としての心理的安全性を構築できる環境を作りましょうという風潮です。

でも、人と人とのつながりですから好き嫌いは必ず生まれます。だからやってはいけないんです。人間対人間の関係性に上司と部下がなってはいけないんです。
その関係性になってしまうと上司の人間力が試されます。真の人間力を試されたとき、上司として機能できる人材なんてほとんどいないんです。
小学校の教室を思い出してください。40人の児童がいるなかで、人間的な魅力で自然にリーダーとなった人はひとりかふたりだったはずです。その確率でしかうまくいかないんです。

人間力ではなくもっとシンプルに考えるべきだと。

安藤氏 : 上司はなぜ部下に指示ができるかというと、組織の役割上責任が大きいからです。だから部下は上司の指示を聞かなければならない、ただそれだけなんですね。
でも、多くの会社では部下が上司の言うことを聞きたいと思うような人間関係を作りなさいと推奨しています。それは無理です。よほどのカリスマじゃないと無理なんですね。

仮にカリスマがあったとしても、尊敬している上司が自分以外の別の社員をかわいがっているのを目にすると、すねたりひねくれたりして「もうついていけない」となってしまいます。
現在、人間力を使ったマネージメントをしようとして苦しんでいるが全国の中間管理職です。中間管理職の皆さんが苦しんでいるから、私の著書のひとつである『リーダーの仮面』が売れるんです(笑)。辛いですよね。

Profile

安藤 広大 氏

1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモを経て、ジェイコムホールディングス(現:ライク)のジェイコムで取締役営業副本部長等を歴任。
2013年に「識学」に出会い独立。2015年株式会社識学を設立。2019年に上場を果たす。「リーダーの仮面」「数値化の鬼」「とにかく仕組み化」などの著書がある。

著書紹介

  • 「とにかく仕組み化─ 人の上に立ち続けるための思考法」
  • 「とにかく仕組み化─ 人の上に立ち続けるための思考法」
    ダイヤモンド社刊
    「リーダーの仮面」「数値化の鬼」に続く、シリーズ三部作の最新作。刊行と同時に話題を集め、発売から半年で26万部を突破するベストセラーに。
    2023年12月現在もAmazon等のランキングで1位を獲得中。仕組み化することでルールによって問題解決を図り、自身もチームも企業も成長させるための考え方を凝縮した一冊。